開業2か月で連日満席の『ブルー ザ スリー』。『渋谷 半地下酒場』今添笑店が表参道で挑む新業態
アパレル出身の2人が立ち上げ、24坪で月商1,700万円を売る繁盛店『渋谷 半地下酒場』。同店を手掛ける合同会社今添笑店が3月、新業態となる中華エスニック『BLUE THE THREE(ブルー ザ スリー)』を東京・表参道にオープン。同店誕生の立役者でもある料理長の冨田新吾氏に、開業の経緯や店づくりについて取材した。
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土地勘のある物件ありきで新店開業を決め、実力のある料理人をスカウト
同店が出店したのは、もとは『青山麺飯坊』という深夜まで営業する中国料理店があった場所。今添笑店の代表の一人、今井洋氏が手掛けた1号店『讃岐うどん愛』のすぐ近くにあり、今井氏自身がよく利用していた店だった。店主の引退を理由に、今井氏に物件の相談があったのが2022年12月。土地勘のある場所だったため即契約したものの業態も決まらず、何をやるかは未定だったという。
店を任せられる料理人を探していた今井氏と共同代表の添田慎也氏が「この人」と見込んだのが、料理長を務める冨田新吾氏だ。冨田氏は中国料理の名店『銀座アスター』の銀座本店で13年間経験を積み、自身でも10年間、飲食店を経営してきた実力派だ。直近では吉祥寺の『ハモニカ広東』で総料理長を務めており、ハモニカ横丁内にある寿司店で週1回、間借り営業していた中華料理居酒屋に今井氏が来店したことで知り合った。「最初は断ろうと思っていた」という冨田氏は、最終的にオファーを受けた理由について次のように説明する。
「50歳を過ぎていますし、吉祥寺で責任のある仕事を任されていたこともあって、そこに骨をうずめるつもりでいましたが、料理人として挑戦したい気持ちもありました。料理に対する思いは誰にも負けないという自信があるし、60歳まで自分がどれくらい通用するのかもう一度試してみたいという思いもあって。今井さん、添田さんに返事をする前日まで悩みました」(冨田氏)
経験の長い料理人が、安心して働ける「飲食のホワイト企業」
「料理が好きで、料理人は天職」という冨田氏が転職を決意したもう一つの理由は、今添笑店の「飲食のホワイト企業をめざす」という社風。「残業手当や家族手当など一般企業なら当たり前の条件がちゃんとあって、働きやすい環境が整っている点は企業として素晴らしいと感じました」と冨田氏。
「お客様の命を預かる仕事をしている料理人自身が、健康的に働けないというのはおかしいですよね。今は仕事を探している料理人に、『それならウチに来れば?』と本音で勧められるので嬉しいです」
冨田氏が1月に加わり、さらに店長には、グローバルダイニングが運営する『モンスーンカフェ』出身の國又拓樹氏が着任。2人の個性を活かす方向で、コンセプトは「中華エスニック」に決定した。メニュー開発で冨田氏が80品提案した料理は「落とすものがない」と好評で、スムーズに3月の開業に至ったという。
「新しいメニューを考える際は、その料理のルーツや正しい作り方などを調べ、本質を知るところから勉強します。『中華エスニック』といっても単なる創作料理ではなく、ベースにしっかりとした中国料理の技法や知識があるからこそ、アイデアを形にできるしアレンジも活きるのだと考えています」(冨田氏)
内装やインテリアはアパレル出身の今井氏と添田氏の人脈を活かして、新鋭のアーティストやデザイナーが手掛けており、独特の空気感が感度の高い表参道の客層にマッチしている。
