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「普段使い」の需要獲得で坪月商50万円超え! 幡ヶ谷『ミヤザキ商店 はなれ』の実直な店づくり

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左から「ハツ」「レバー」(各130円)、「ラム」(180円)、「茗荷と大葉の豚巻き」「しそチーズの豚巻き」(各190円)。いずれも新鮮な肉を絶妙な焼き加減で提供している

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料理はできる限り安く、その日にすべて売り切る

たとえば『ミヤザキ商店 はなれ』のメニューは串物なら130円からとリーズナブルで、かつボリュームもある。ここまで攻めるのはなぜなのか。

「やはり普段使いしやすい店を目指すなら、価格面でこちらもある程度身を切る必要はあると思います。メニューの中には利益がほぼないものもありますが、そこはほかの料理との兼ね合いでなんとかバランスを取っています」

また、食材はその日に全部売れる前提で、ロスが出たら赤字になるぐらいのギリギリのバランスで仕入れているという。

「これも価格を抑えるための戦略です。もちろんもう少し値段を上げれば、売れ残っても赤字にならないし売上も増えるんですが、それだとお客様の負担が大きくなってしまうので」

しかし、一日で売り切れる量を仕入れるということは、毎日新鮮な食材を使えるということでもある。これは店の強みだ。

「肉系は特に鮮度が美味しさにつながりやすい。安く提供して売り切るという好サイクルが確立できたことで、売上にも良い影響が出ていると思います」

売り切るための調整は仕込み量だけではない。食材は端材まで活用するなど、廃棄分を減らす努力も常に行っているという。

「たとえば『ねぎトロロ焼き』というメニューには、長芋の千切りを作る際に余る皮の部分をミキサーで潰して使っています。もともと捨てていた部分ですが、潰して焼くことで美味しく食べられるんです」

大人気の〆物メニュー「チキンライス玉子のせ」(490円)

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「接客は付かず離れずの距離感、店には活気」の絶妙バランス

そんな宮崎氏が接客面で心がけていることは「距離感」だという。

「すごく漠然とした言葉で申し訳ないんですが、飲食店って空間の心地よさが大事だと思っているんです。そういう思いがあるから、お客様には必要以上にアプローチしないようにしています」

もちろんその真意は、ただほったらかすということではない。お客が何かを探している様子なら、察して意識を向けるなど、近すぎず遠すぎずの適度な『距離感』を保つという意味だ。

「そうしようと思った理由は、自分自身、飲食店でグイグイ接客されるのが苦手だから。店員さんから『お兄さん、どうっすか』みたいにやたらフレンドリーに来られるとちょっと引いてしまうし、逆に棒読みでおすすめを紹介されても内容が全然入ってこないんですよね。こちらが良かれと思ってやっていることでも、お客様の居心地が悪くなるならやらないようにしようと」

一方で、店内の活気づくりは意識的に行っていると話す。

「ドリンクの注文が入ったら、オーダーはしっかり発声して通すようにしています。店員同士の掛け合いがあることで、飲んでいる側もちょっと元気になれると思うので」

タッチパネルや卓上のQRコードを読み込んで注文できる店も増えているが、「うちはアナログでやっていくつもり」と宮崎氏。顧客データの蓄積やオーダーミスの軽減など、経営的に便利な面はあると認識しながらも、「そうなるとお声がけできる機会が減ってしまいますから」と笑う。これも心地よい雰囲気づくりのための絶妙なさじ加減なのだろう。

店内の照明を少し暗めにしているのも落ち着いた空間づくりに一役買っている

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松嶋三郎

ライター: 松嶋三郎

フリーランスのライター。堅いネタから柔らかいネタまで、週刊誌やビジネス誌など紙・Web問わず多数のメディアで執筆中。「書く記事はジャンルも内容も媒体も食わず嫌いしない」がモットー。 https://twitter.com/matsushima36