飲食店ドットコムのサービス

「SAKE」が世界のお酒になるかも? 日本酒の未来を創る若手酒造家たち

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

海外から逆輸入される人気銘柄も

7月16日、ロンドンで開催された世界最大級のワイン品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」で、ほまれ酒造の『会津ほまれ 播州産山田錦仕込 純米大吟醸酒』が、日本酒部門の最優秀賞を受賞した。授賞式には、ほまれ酒造の唐橋裕幸社長、そして福島県の内堀雅雄知事が出席し、復興途上である福島県産の日本酒が見事グランプリに輝いたことを喜んだ。

このように、世界的なワイン品評会で日本酒部門が設立されるなど、海外での評価が高まりつつある日本酒。最近は、海外で高い評価を受けた銘柄が日本へ逆輸入されるケースもあり、こうした銘柄が市場をさらに活性化している。たとえば、愛知県の萬乗醸造が造る「醸し人九平次」がそうだ。

この日本酒は、海外での評価を意識して造られており、これまでの日本酒としては珍しく、“酸味”を生かした味に仕上げられている。もともと酸味は雑味として捉えられてきたのだが、ヨーロッパにはワインのように酸味に美味しさを見出す文化があり、それに合わせて上品な酸味を加えたというわけだ。さらに、ボトルもスタイリッシュなデザインに仕上げることで、一流レストランでも取り入れやすいよう工夫。その結果、パリの『ホテル リッツ』や三ツ星レストラン『ギー・サヴォア』でも扱われる銘柄へと成長。このフランスでの人気ぶりが日本へ伝わり、逆輸入という形で、日本でも高い人気を博すようになったのだ。

次々と斬新な日本酒を生み出す新政酒造

私たち日本人にとっては“おやじの酒”というイメージが強かった日本酒。しかし、先に述べた海外での人気ぶり、さらに国内の若い造り手たちの活躍によって、そのイメージは変貌を遂げようとしている。特に、若い世代の造り手たちは、伝統を重んじつつも革新的な手法で日本酒造りに励んでおり、日本酒の新たな可能性を示しつつある。

たとえば秋田県の新政酒造を率いる佐藤祐輔氏。彼は東京大学を卒業後、フリーランスの編集者・フリーライターとして活躍していたのだが、32歳の頃に地元へ舞い戻り、家業であった酒蔵へ入社。これまで普通酒だけを造っていたこの酒蔵を純米酒専門の酒蔵へと方向転換し、「陽乃鳥」「亜麻猫」「No.6」といった革新的な日本酒を次々と世に送り出してきた。結果、赤字経営だった酒蔵を見事回復させるに至ったのだが、彼のスゴいところはその経営手腕だけでなく、これまでにない日本酒を造りだそうという創造力にある。

「陽乃鳥」はいわゆる貴醸酒で、仕込み水の代わりに酒を用いて造られている。酒を酒で仕込むわけだから、味はより濃厚になるのが通常だが、「陽乃鳥」は軽やかな味わいに仕上げているのが特徴だ。また「亜麻猫」は醸造用乳酸を使用せずに造った酒で、日本酒用の黄麹に焼酎用の白麹を混ぜ合わせて造られている。これにより軽い飲み口、かつ爽やかな香味が実現。乳酸を用いずにこうした味を表現することは難しく、新政酒造ならではの手法として賞賛を浴びている。

こうした味の多様化を支えているのが、最新技術を投入した醸造設備だ。新政酒造も積極的な設備投資を行っており、機械の正確さと杜氏の熟練の技、双方の良いところを用いながら新商品の開発に励んでいる。伝統とテクノロジーの融合が、日本酒の発展の鍵を握っていると言えそうだ。

さて今回は、最近の日本酒業界を牽引する若手酒造家についてご紹介した。日本の食文化が世界から注目を集めるなか、日本酒も着実に次のステージへと歩みを進めている。日本酒がワインのように世界中で愛される酒になる日も近いかもしれない。

この記事は役に立ちましたか?
はい いいえ
Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

『飲食店ドットコム ジャーナル』は飲食店ドットコムが運営する“食”に関するWEBマガジンです。飲食業界の最新ニュースをはじめ、食にまつわる役立つ情報や、実際に働く方々の声を読者に届けていきます。