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坪月商30万円を売る駒場東大前『菱田屋酒場』。老舗定食屋を継いだ5代目店主の挑戦

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人気のチャーシューエッグ880円(税込)。厚さが1センチ以上あるにも関わらず、箸で切れるほど柔らかい豚の腕肉と継ぎ足しで使い続ける秘伝のタレがマッチ

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“暇な店だった”からこそ続けている丁寧な仕事

居酒屋という新たな業態ではあるが、『菱田屋』の精神は残そうというのがポリシーだという。

「『菱田屋』という名前が付いているのにガラッと変えると全然別の店になってしまう。それは避けたい部分でした。あくまで定食の『菱田屋』の料理で飲める店というのが基本スタンスです。それでいてちょっとだけオシャレに、でも格好つけすぎない。“2.5枚目”みたいな店を目指しています」

極力仕込みをせず、注文を受けてから調理をすることも受け継いだ精神だという。

「『菱田屋』は時間に余裕があった頃から仕込みをほとんどせず、注文が入ってから調理をするスタイルを続けています。それは『菱田屋酒場』でも同じです。提供時間もかかりますし、スタッフのオペレーションは大変になりますが、せっかく外食をするなら美味しい料理を食べていただきたいですからね」

なるべく既製品を使わず、手間暇をかけることも大切にしている点だ。

「たとえばタルタルソースのように、既製品を使った方が効率的になるものも自分たちで作っています。アジフライも注文が入ってから塩コショウをしてパン粉を付けて揚げる。子供に料理を作るときの『ちゃんとしたものを食べさせたい』という気持ちと同じで、チェーン店の定食屋ではできない、心のこもった料理を一人ひとりに提供すれば、きっと気持ちはお客様に伝わるはずなんですよね」

入り口付近の立ち飲み席でちょい飲みを楽しむ客も多いのだとか

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坪月商30万円。まだまだ伸びしろあり

『菱田屋酒場』をオープンして約2年、思惑通りに店は育ってきているのだろうか。

「繁盛している『菱田屋』の名前をつけたので、業態が変わってもお客様が流れて来るだろうと思っていたんですが、定食屋でご飯を食べたい人と居酒屋でお酒を飲みたい人はまったく客層が違うことがわかりました」

そうは言うものの、飲み屋が少ない駒場東大前の需要をとらえ、売上はしっかりと上がっているという。

「15坪、14席の店で月商がおよそ450万円。客単価はランチタイムが1,270円、ディナータイムは4,000円くらい。テナントの賃料が15万円、原価率は30%ほどで、利益は十分取れています。課題を挙げるとすればランチタイムが少し弱いので、客数をもっと増やせればなと思っています」

業態の違う店舗を経営することによるメリットも感じているのだとか。

「たとえば豊洲で仕入れた美味い魚を、定食用の刺身と酒場用のぶつ切りといったように使い分けができ、効率よく出せるようになりました。そうすることでお客様は新鮮で美味しい料理を食べられるし、店はロスを減らせるので双方にメリットがありますね」

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松嶋三郎

ライター: 松嶋三郎

フリーランスのライター。堅いネタから柔らかいネタまで、週刊誌やビジネス誌など紙・Web問わず多数のメディアで執筆中。「書く記事はジャンルも内容も媒体も食わず嫌いしない」がモットー。 https://twitter.com/matsushima36