坪月商30万円を売る駒場東大前『菱田屋酒場』。老舗定食屋を継いだ5代目店主の挑戦
東京大学駒場キャンパスの最寄り駅・駒場東大前駅から徒歩3分の場所にある『菱田屋酒場』。100年以上の歴史がある定食屋『菱田屋』の2号店として2021年にオープンし、人気を集めている居酒屋だ。
今回はそんな『菱田屋』の5代目で『菱田屋酒場』の店主・菱田アキラ氏を取材。老舗を営む中で守り抜いてきたこと、そして新たな取り組みについて聞いた。
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画像を見る創業は明治時代、『菱田屋』の歴史
『菱田屋』の創業はおよそ120年前の明治時代。
「『菱田屋』はもともと東京大学の敷地内にあった東大専門の仕出し弁当屋さんが始まりだと聞いています。そしてある時期に移転し、現在の場所で仕出し弁当もやりつつ定食屋としての営業を始めたそうです」
しかしながら、はっきりとした記録は残っておらず、5代目となる菱田氏にも詳しいことはわからないそうだ。
「定食屋を始めた当初のメニューは中華料理やおでん、当時流行っていたあんみつなどがあったそうです。食材が豊富ではなかった時代ですが、豚肉は比較的入手しやすかったので、現在の『菱田屋』でも人気の生姜焼きはこの頃から出していたと聞いています」
2000年頃、神泉の中華料理店『文琳』(現在は閉店)に勤務していた菱田氏は、同僚だった現在の奥さんと結婚し、入り婿として『菱田屋』を継ぐことになる。しかし当時は「正直、あまり繁盛していなかった」という。
「『老舗定食屋の5代目』といえば聞こえはいいですが、その頃は客入りもまばらで、暇な時間は店員がテレビを見ているような状態でした。自宅兼店舗で家賃がかかっていないため、そこまで稼がなくていいという考えだったのかもしれません」
日々の営業を続けるうち「さすがにこんなに暇なのはヤバい!」と4代目である義父を説得し、リニューアルを進めた。
「まず、外から店内が見えるようにガラス張りにしました。調理の担当もお義父さんと自分で分担し、メニューを見直しました。また、お酒を楽しめるようにアルコールメニューも増やしました」
画像を見るオープンのきっかけは新たなニーズの発見から
リニューアルが功を奏して菱田屋は行列ができるほどの人気店に。その勢いが『菱田屋酒場』のオープンにつながる。
「『菱田屋』は定食屋なので食事の量が結構多く、女性客が増えていたこともあってもうちょっと少ない量で食べたいという声が増えていました。加えて、ありがたいことにお酒を飲むお客様も増えてきていたのですが、どうしても回転が悪くなるので、ほかのお客様をお待たせしてしまいます。それなら『菱田屋』の料理をちょっとずつ食べられて、お酒も飲める店を作ればそれぞれのニーズに応えられるな、と考えました」
『菱田屋酒場』のオープンは2021年7月26日。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が出されている真っ最中だった。
「『よくこんな大変な時期に始めるね』と言われましたが、ほかの飲食店が休業したり閉店するこのタイミングはライバルが少ないので逆にチャンスだと考えました。外出を控える人が多かったためいきなり忙しくならず、いろいろと模索しながらやれたので逆によかったかなと思います」