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なぜ『リストランテ カステッロ』は、千葉の郊外で年商3億円を稼げるのか!?

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前菜(後述)を盛りつけ中の山田シェフ

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売上を伸ばすために行った大胆な行動

連日全36席が満席で厨房はフル回転でも利益が出ないのであれば、席数を増やすしかない。

「お客様に『予約が取れない』と怒られたこともあり、自分で図面を引き、増築することにしました」

開業同年の12月、ホール(収容人数24名)とオット(収容人数12名)だけだった『カステッロ』にグロッタ(収容人数12名)が増えた。

「完成したときは新鮮味もあり、満足するのですが、すぐに飽き足らなくなります」

その後、レジーナ(収容人数20名)とテラスに続き、パラッツオ(収容人数60名)を完成させた。現在、全5室で稼働している。

「作っても作っても満足しない」とこぼすが、増築は本人だけでなく、客を飽きさせない工夫でもあった。

「同じことを続けていたのではお客様に飽きられます。10年20年と支持してもらうには変化が必要です」

コロナ禍にトレイを改装。おむつの交換や車椅子でも利用できる多目的トイレを新設した。

「家族で食事ができるのはファミレスだけではありません。お年寄りや小さなお子様がいるご家族にも安心して来ていただけるようにすべきです」

北イタリアのリストランテをイメージした佇まい

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婚礼や会合、法事などには個室を用意する

以前は『カステッロ』で結婚式を挙げるカップルもいたが、コロナの影響なのか、近年は20名程度の婚礼で利用する家族が増えた。

法事も多くなってきた。その数年間100件以上。陰膳の用意などの相談も受けている。法事は和食のイメージが強いが、陰膳にパスタを選ぶ人が増えているのかもしれない。

「レストランにもホテルと同じような施設や存在価値が必要。今後もっと必要なものが出てくるかもしれません」 

第1駐車場から玄関に続くアプローチも非日常的な空間の一部

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『カステッロ』を婚礼や会合、法事などが多いのには理由がある。先述したように、収容人数が異なる5つの部屋を個室として利用できるのだ。筆者は20年程前から『カステッロ』に通っているが、10数名でオットを使わせてもらったことがある。

もちろん少人数の客でもないがしろにはしない。予約が入った順番に部屋を埋めていくようなこともしないし、客が希望する部屋があればできる限り対応している。筆者は少人数で予約するときは、パラッツオをお願いしてきた。パラッツオは収容人数が多いとはいえ、満室だった記憶がない。その理由が今回わかった。1部屋を満室にしない工夫をしているというのだ。

3部屋目に増築したレジーナ。部屋ごとにコンセプトを変えている

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1部屋を満室にしないように予約を受ける

「どの部屋も席がまばらに埋まるようにしてきました」

予約を取る際、食事が終わりそうな時間に次の客を案内できるように、席をパズルのように埋めていくというのだ。ときに予約時間を少しずらしてもらうことで、滞在時間が重ならないように配慮している。

「小さなお子様やお年寄りがいるとか、窓際を好むお客様であるという情報を持ち寄り、席を埋めていきます。2人客が多い日は2人客で部屋を埋めるなど、各部屋の雰囲気を店が作るようにしてきました」

前菜。複数の料理がひと皿に盛られた、『カステッロ』の代名詞とも呼ぶべき一品

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“ゆったりとした空間で静かに食事をしてほしい”。創業にあたり山田シェフが考えた『カステッロ』のコンセプトだ。全36席のスタート時点ではそれができなかったが、部屋を増やしていったことで理想を叶えることができた。

「128席あっても70席しか埋めません。ザワザワした店をお客様は好みません。静かに食事を楽しめるからこそリピート客が多いのだと思っています」

70席でなぜ収益を出せるのか。それは『カステッロ』がコース料理しかやっていないことにも要因がありそうだ。

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中島茂信

ライター: 中島茂信

CM制作会社を経てライターに。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』『101本の万年筆』『瞳さんと』『一流シェフの味を10分で作る!男の料理』『自家菜園のあるレストラン』。『笠原将弘のおやつまみ』の企画編集を担当。「dancyu web」や「ヒトサラ」、「macaroni」などで執筆中。