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なぜ『リストランテ カステッロ』は、千葉の郊外で年商3億円を稼げるのか!?

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『リストランテ カステッロ』の山田直喜オーナーシェフ

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「うちは異例な店ですよ」。こう語るのは、『リストランテ カステッロ』の山田直喜オーナーシェフだ。

まず異例なのがその売上。なにしろ、全128席で年商3億円も稼いでいるのだ。この数字が都内の一等地の店なら異例ではないだろう。『カステッロ』があるのは千葉県佐倉市の郊外。成田空港へ向かう私鉄駅から徒歩20分の場所だ。

大半の客がタクシーか自家用車で来るため、店に隣接する駐車場は平日でもほぼ満車。週末ともなれば、少し離れた第2駐車場を利用するしかない。地方の郊外型レストランがなぜ3億円もの売上を達成できたのか。

「数字はあくまでも結果なんです。自分が理想とする店を形にしていったら、『カステッロ』という長く愛される商品をつくることができたのだと思っています」

山田シェフが目標に掲げたのは「売上」そのものではない。どれだけの原価の料理をどれだけ売って、どれだけの利益を出し、その収益をスタッフに還元しようと考えて経営してきた。

1998年4月のオープン当初、36席だった店は連日満席。月商800万円だったが、利益は少なかった。今でこそ毎日原価計算をしているが、創業当初、オーナーシェフの脳裏には損益分岐点という言葉がなかった。

数字に明るくなかったオーナーシェフが、なぜ年商3億円を達成するようになっていったのか。創業25周年を迎える『カステッロ』を取材した。

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坂道を登りきった丘の上に『カステッロ』が佇んでいる

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雑誌の取材記事などを担保に資金1億円を調達

「オープン初日から大盛況。当然黒字だろうと喜んでいたら開業2か月目、妻に『お金が足りない』と言われました」

月商800万円でなぜ利益が出なかったのか。店の建築費用として1億円の融資を銀行から受けた。元利均等返済だったため、返済当初は利息分の支払いが大きく、元金がなかなか減らない。このままでは利益が出る体制にならないことから資金を貯め、約10年で一括返済した。

ホールと呼ばれるこの部屋と、もう1部屋で創業した

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話は前後するが、1億円の融資を受けるまでがひと苦労。当時、山田シェフはオーナーではなかったが、佐倉市内にあった『リストランテ・カピサノ』のシェフを10年間務めていた。独立を考えていた90年代後半はバブルが弾けた後で、銀行が貸し渋りをしていた時代だった。

「1億円の融資を銀行にお願いしたら『実績を提出してほしい』と言われました」

料理人が人様に誇れる実績は何があるのか。『カピサノ』の月商が500万円だったことも十分実績になったと思われるが、山田シェフは別の資料を用意した。

「これまで取材を受けた掲載誌やTV番組を収録したビデオを提出しました。『これらを担保にしましょう』と言っていただき、融資を受けることができました」

今であれば、Webメディアで受けた取材記事も担保になるのかもしれない。

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中島茂信

ライター: 中島茂信

CM制作会社を経てライターに。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』『101本の万年筆』『瞳さんと』『一流シェフの味を10分で作る!男の料理』『自家菜園のあるレストラン』。『笠原将弘のおやつまみ』の企画編集を担当。「dancyu web」や「ヒトサラ」、「macaroni」などで執筆中。