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なぜ『リストランテ カステッロ』は、千葉の郊外で年商3億円を稼げるのか!?

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ドルチェ以外は、シェフも含め4人で厨房を回している

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原価をトータルで考え、コース料理を考える

昼も夜も追加のアラカルトがあるが、コース料理(昼4200円〜、夜4500円〜)が基本だ。コースにしたのは客にイタリア料理を知ってもらうのが狙いだった。

イタリア料理が「イタ飯」と呼ばれていた創業当時、パスタとピッツァとティラミスがイタリア料理だと思われていた。

「あの頃イタリア料理をコースで出す店は少なかったと思います。コースで食べてもらうことでイタリア料理を理解してもらいたい。そう思い、コース料理を出すことにしました」

『リストランテ・カピサノ』の時代からこの畑で野菜を栽培してきた

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コースよりもアラカルトのほうが売上が立つという考え方もあるが、山田シェフは異を唱える。コース料理のすべてを同じ原価では出せないし、出す必要もない。原価割れをする料理があったとしても別の料理で利益を出せればいいと考えている。

「例えばスカンピは原価が高いです。でも、今が旬のスカンピをお客様に食べてほしいと思えば、原価が割れたとしてもスカンピを使います」

トータルバランスを考えてコース料理を決める。それをするのがオーナーシェフの仕事だ。自家製スモークサーモンやシェフ特製のカラスミを使うことで原価を下げるようにしてきた。

「自家菜園で育てている野菜もトータルバランスに欠かせません。スカンピで損をしたとしても畑で作ったナスで儲けることもできます」

庭に咲き誇る草花も『カステッロ』が提供するご馳走のひとつ

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オーナーシェフは、店のプロデューサーでもある

オーナーシェフとして料理以外にもすべきことがあるという。

「テーブルを回り、挨拶をすることでお客様の信頼を築くようにしてきました。会話の中で自分のことを覚えてくれているんだという印象をお客様に残すことが大切。僕は笑いをひとつ取るように心がけています(笑)」

常連客の個人情報を山田シェフが「カルテ」と呼ぶタブレットPCで管理している。客が好きなものや嫌いなもの、アレルゲンなどをカルテに記載しているのだ。

「1週間に2度来店されるお客様もいます。同じ料理を続けて出せないので、食べてもらった料理をカルテに打ち込んでいます。大変ですが、大切です」

パラッツオ。シェフ自身がこの空間を一番愛しているはず

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もう一つ、オーナーシェフがすべき重要な仕事がある。店全体のプロデュースだ。山田シェフは木立や草花が咲き誇る庭やエントランスも含め、『カステッロ』という非日常的な空間を築き上げた。長年務めてきた元スタッフによれば、『カステッロ』は山田シェフが思い描くイタリアを具現化したものだという。

床は総大理石。シャンデリアなどの調度品はイタリア製。最後に増築したパラッツオは天井をドーム状に仕上げた。すべての部屋に大きな窓があり、四季折々の庭の景色を愛でられるようになっている。

山田シェフが率先して木々を剪定し、花を植栽しているのは、緑あふれる庭も料理の一品だと考えているからに違いないと元スタッフは話してくれた。

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中島茂信

ライター: 中島茂信

CM制作会社を経てライターに。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』『101本の万年筆』『瞳さんと』『一流シェフの味を10分で作る!男の料理』『自家菜園のあるレストラン』。『笠原将弘のおやつまみ』の企画編集を担当。「dancyu web」や「ヒトサラ」、「macaroni」などで執筆中。