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能登半島地震、ミシュラン一つ星シェフが連日の炊き出し。温かい食事に涙する被災者も

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チーム七尾パトリアの面々、前列左から4人目が川嶋氏(写真提供:川嶋亨氏)

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ミシュラン一つ星の日本料理店『一本杉 川嶋』(石川県七尾市)の川嶋亨店主(39)の呼びかけで集まった「チーム七尾パトリア」のメンバーが、能登半島地震の被災者に手作りの料理を届ける支援を地震翌日の1月2日から3週間続けた。余震が続く中、プロが作った料理合計約1万食を避難所に届けて被災者を励まし続けた。地域の人々のために奮闘する川嶋氏に話を聞いた。

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大きな被害が出た七尾市(写真提供:川嶋亨氏)

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「笑顔になっていただけるようなことを」

川嶋氏らおよそ25人のチームメンバーは七尾市の駅前にある複合施設「パトリア」に集い、生産者などから提供してもらった食材を料理して連日、避難所に届けている。「避難所も最初のうちはカップラーメンと冷たいおにぎりばかりで、被災者の方はまともな料理を食べていないという状況でした。そういう所に料理人がつくった料理を持って行った時は、涙する方も多数いらっしゃいました」と言う。

料理をつくる川嶋氏(右)(写真提供:川嶋亨氏)

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川嶋氏は料理を作るだけでなく、実際に避難所にも足を運ぶ。被災者がどのような環境にいて、何を望んでいるのかを直接聞き、代表者と意見を交わすこともあった。避難所には高齢者が多いため塩分を控えめにし、健康面に配慮して「野菜をたっぷり」(川嶋氏)の料理を作ることも心がけたという。

「たとえば、魚の温かい料理が食べたいという要望があった時は、かぶら(かぶ)とサーモンのクリームシチューをつくりました。かぶらは給食に出す予定だったものでしたが、(地震で届けられなくなり)廃棄するなら、ということでいただいたものです。サーモンは魚屋さんが冷凍のサーモンがたくさんあるということでしたのでお分けいただいて、温かい料理にして届けました」

避難所で被災者と撮影、左から2番目が川嶋氏(写真提供:川嶋亨氏)

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被災者の要望を聞き、被災者に「寄り添う」(川嶋氏)姿勢を貫く。美味しい食事はストレス解消の効果が見込める。要望に応えられるように一流の料理人が作る食事は被災者にはこの上なくありがたく、ストレスが溜まる避難生活の中で一服の清涼剤以上の効果が見込める。

「『避難所にいると日にちが分からなくなる』という声がありましたから、1月7日は七草風あんかけチャーハンを届け、今日は七草の日だということを感じてもらうようにしました。料理を通して楽しんでいただく、笑顔になっていただけるようなことを考えて献立を立てています」

細やかな心配りが、避難所暮らしの被災者を勇気付けたことは想像に難くない。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/