行列のできるキッチンカー『煮込み伝次』が実店舗で復活。月商200万円を目標に神保町を席捲
「うなぎ」から「うどん」へ。そしてキッチンカー『煮込み伝次』が誕生
ここまで経営面では順風満帆なように見えるが、すべてが順調だったわけではない。
「現在、台東区で営業中の『うどん伝次』ですが、実はうなぎ店としてスタートしているんです。ところがこれが全然お客様が来ない。場所は新御徒町、浅草橋、秋葉原といった最寄駅から約10分の下町風情が残るエリアだったのですが、うなぎは頻繁に食べるものではないし、値段も高い。場所と内容がマッチしていなかったのだと思います。1年ほど続けましたが、これ以上は難しいと判断し、うどん業態に切り替えたんです。『うどん伝次』は昼営業のみですが、徐々に採算がとれるようになってきました」
『うどん伝次』が軌道に乗り始めた頃、名物メニューが誕生した。「牛すじ肉めしとうどん」のセットだ。大鍋でじっくりと煮込んだ味わいが大好評となり、「牛すじ肉めし」を単体で注文するお客も増えていったという。そこで思いついたのがキッチンカーでの販売。『煮込み伝次』誕生の瞬間が訪れる。
「焼き鳥と牛すじ、異なるジャンルの食材を扱っているので、コスト面で厳しいのではないかと言われることがあります。でも『やきとり伝次』で使う豚モツと、『うどん伝次』で使う牛すじは、東京都中央卸売市場食肉市場の同じ業者から仕入れているので、比較的安く手に入るんです」
こうして2018年頃、キッチンカーでの販売を開始する。
「牛すじ煮込みの仕込みは『うどん伝次』で行うので、営業的なハードルはそれほど高くありませんでした。出店場所を紹介してくれる業者に登録し、2台のキッチンカーで都内10か所以上を巡っていました」
評判は上々だったが、2020年初頭、新型コロナウイルスの感染拡大が立ちはだかる。オフィス街にキッチンカーを出しても、出社している人が少なく、思ったような売上が見込めない。この頃には『やきとり伝次』と同じ建物内に『やきにく伝次』も開業していたため、「公的給付金がなかったら、危なかったかもしれない」と国松氏は当時を振り返る。
2022年、まん延防止等重点措置の解除を受け、キッチンカー『煮込み伝次』を再開。この頃から国松氏は『煮込み伝次』の実店舗化を模索するようになる。
より真摯にお客様と向き合うために。実店舗への梶切り
「キッチンカーの出店場所を紹介してくれるシステムはとても便利なのですが、マージンをはじめとする細かなルールがたくさんあるんです。今後自分たちがやりたいような店舗経営のことを考えると、実店舗を持ったほうがいいだろうと思うようになりました。物件探しを始めてほどなくして、現在の神保町の物件が見つかったので契約したという流れです」
店舗設計は社長である兄が経営する設計事務所が請け負った。店舗設計はお手の物だ。
「『煮込み伝次』の内装で一番こだわったのが、店の中央にある長いU字型のカウンターでした。この形ならどこにいてもお客様と対面できるんです」
店長にはキッチンカー時代から貢献してくれている片山みなみ氏を指名。「明るい性格で、お客様とのコミュニケーション能力も抜群」と全幅の信頼を寄せる。
「ここは片山にとっての舞台だと考えています。飲食店は美味しい料理も大切ですが、接客が大事。スタッフたちが醸し出す明るい雰囲気は、居心地の良さに直結します。そういう意味でも、片山のコミュニケーション能力に期待しています」
