月商520万円を売る西荻窪『スタンドキッチン ルポン』。“立ち飲み×中華ビストロ”という最適解
ジャンルのすき間を突いた“中華ビストロ”。着目したのは「立ち飲みとの相性」
店舗の拡大に加え、リニューアルを機に鈴木氏が全面に打ち出したのが、本格的な中華料理を自慢の自家製レモンサワーやナチュラルワインと合わせながらカジュアルに楽しむ“中華ビストロ”という新たなコンセプトだ。
中華に目をつけた理由の一つに、鈴木氏は「立ち飲みとの親和性の高さ」を挙げた。
「立ち飲み店時代には『まぜそば』と『自家製レモンサワー』を看板メニューにしながら、ビストロ的な洋食メニューや餃子などといった定番居酒屋料理も提供していました。でも調理に時間がかかる上、料理によっては合わせる酒が限られてしまうなどなかなかオペレーションがうまくいかなくて。そんな時、偶然立ち寄った近所のスーパーで、いわゆる『即席中華料理の素』がズラッと並んだ棚を目にして『これだ!』とひらめいたんです(笑)」
つまみからメインまで、味付けさえ決まれば比較的スピーディーに提供できる中華おかずの種類の豊富さに、立ち飲みとの相性の良さを直感したという鈴木氏は、すぐにレシピを考え店で提供。予想通りの好感触に、エスニックや中華のメニューがどんどん増えていったという。
さらに後押しとなったのが、近年の町中華ブームによる中国料理の二極化だ。大衆派と既存の高級派、両者の間にはカジュアル中華ともいうべきジャンルのすき間があることに目をつけ、リニューアルオープンに伴い“中華ビストロ”を店の代名詞に位置づけた。
好奇心をくすぐる仕掛けと値ごろ感こそ、カジュアルの醍醐味
そんな『スタンドキッチン ルポン』の現在の名物料理の一つが、炙ったカツオやブリに特製の「紅(べに)ソース」を合わせた一品。数種類の中華スパイスと黒醤油、砂糖、自家製ラー油などで作る、見た目や名前からは味の想像がつかないこの妖艶なソースに象徴されるよう、鈴木氏は「思わず客が誰かに話したくなる・興味をそそるメニューづくり」を軸に据えているという。「紅ソースって何だろう?」「西荻の紅ソースの店、知ってる?」という具合だ。
こだわりの自家製レモンサワーも、あえて「レモンサワー」は謳わない。アレンジの異なる4種を「Jack(ドライ)」「Queen(自家製シロップ)」「King(国産塩レモン)」「Jorker(スパイス)」と銘打ち、客の想像力や好奇心を掻き立てる。と同時に、「黒糖レモンサワー」「塩レモンサワー」などの言葉から受ける、味の先入観から一線を画す狙いもあるという。
「お客様に楽しそうな反応をしていただけるのが、好きなんです」と、微笑む鈴木氏。
見て・食べて、「楽しい!」「おもしろい!」「美味しい!」――。それこそが「カジュアル」の何よりの醍醐味だと鈴木氏は語りながらも、それも手に取りやすい価格があってこそだと、コストの工面に抜かりはない。手間はかかるが、各素材は個別の業者からできるだけ大量に仕入れて原価を抑えるなど、経営者としての確かな顔ものぞかせた。
