坪月商65万円を売る“街外れ”の居酒屋『新宿 六』。不利な立地も「SNS」をきっかけに繁盛店に
JR新宿駅から歩いて10分ほど。繁華街の喧騒から離れた場所に佇むカジュアルな居酒屋には、平日にもかかわらず大勢の客が押し寄せる。コロナ禍まっただ中の開業から約4年。がっちり人気をつかんだ“ネオ大衆酒場”の旗手に、立地をものともせず新たな顧客を呼べるカラクリを尋ねた。
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開業当初は立地の難しさに苦労
団体客で賑わう新宿3丁目や不夜城の歌舞伎町とはガラリとイメージが変わる、静かな雰囲気の新宿6丁目。昔ながらの蕎麦屋や個人経営の喫茶店などが残る商店街には、賃料の低さも相まって新たな業態の飲食店やインバウンド向けのゲストハウスが増加中だ。
12坪25席の『新宿 六』は、3時間半の昼営業から満席続きで3回転。17時から23時までの夜営業も、2回転が予約客でほぼ埋まる。「週末の夜は2回転半。うまく17時、19時、21時でハマれば3回転します」(料理長・小林秀明さん)と大盛況だ。
しかし、開業時は目も当てられなかった。「初日のランチは来店がたったの二人。“これは終わった!”と青ざめました」(代表・中村健人さん)。そこからどのように起死回生し、現在に至ったのか?
開業後に気づいた「見えないオフィス街」
ランチの不振は原因が明確だった。同じエリアで席が8割ほど埋まる他店に比べ、単価が100~200円ほど高かったのだ。すぐに価格の見直しを行い、地道なビラ配りで認知度を高めていく。
固定客が付き始めると、徐々にエリアの特性がわかってきた。「一見すると低層マンションなどが多い閑静な住宅街。でも、そこには“目に見えないオフィス”がたくさんあることに気づきました」(中村さん)
ランチ営業を通して、ワンルームに事務所を構える経営者やリモートワーカーなどの姿が見えてきたのだ。ただし、そこから夜の盛況に繋がるまではもう少し時間がかかった。
「近隣にタワーマンションもできましたが、地元の人が外食している印象はないし、あまり“呑んべえ”みたいな人がいないエリア。国立競技場にも近いから東京オリンピックの需要も当て込んでいましたが、見事に空振りでしたね」(中村さん)
その危機を救ったのが、グルメ系インフルエンサーの増加だった。
