7月より新紙幣が発行。飲食店の券売機改修などの費用を補助する自治体も
2024年7月3日から、2004年以来20年ぶりの新紙幣が発行される。新紙幣発行は偽造紙幣が出回らないために必要ではあるものの、飲食店にとっては券売機の対応などで支出が増えてしまう可能性もある。そこでここでは、新紙幣の偽造防止技術と飲食店で券売機の更新が必要になる点について解説する。
新紙幣に導入された新しい偽造防止技術
財務省と日本銀行は、2024年7月3日から新紙幣を発行すると発表した。新紙幣の発行は2004年以来20年ぶりとなり、デザインを刷新するだけでなく、新たな偽造防止技術を導入している。日本銀行は、2024年3月末までに新紙幣を45億3,000万枚備蓄する計画で、7月3日から金融機関に配布される。
画像を見る1万円札の肖像画は「近代日本経済の父」ともいわれる渋沢栄一、5,000円札は津田塾大学の創立者で女子高等教育の先駆者でもある津田梅子、1,000円札は日本近代医学の父として知られ細菌学発展に貢献した北里柴三郎となる。
画像を見る新たな偽造防止技術としては、紙幣では世界初となる肖像画を立体的に見せるホログラム技術と高精細なすき入紙(すかし)が導入された。また、インキを高く盛り上げる深凹版印刷やマイクロ文字なども、これまで同様に使われている。
画像を見る【注目記事】イートイン営業休止も売上は9割をキープ。鮫洲『バッカ』の生き残り戦略
新紙幣導入により券売機改修・更新が急務。補助を行う自治体も
新たな偽造防止技術が導入されることにより偽造が難しくなる一方、飲食店は新紙幣に対応した券売機への更新が迫られる。券売機を新しく導入する場合、ボタン式かタッチパネル式か、全紙幣対応か一部紙幣対応かなどの種類にもよるが、購入すると50万〜200万円くらいかかることもある。レンタルやリースで対応する方法も考えられるが、利用料で毎月数万円のコストがかかってしまう。
新しい券売機に更新すると少なくない支出になり、経営も大きな影響を受けるが、新紙幣への対応で券売機を改修・更新する場合に補助金を交付する自治体も見られる。
例えば、東京都葛飾区では、新紙幣に対応した⾃動販売機の買い替え・改修を⾏った区内の中小店舗を対象に、新紙幣対応⾃動販売機1台につき30万円を上限として費用の半分を負担する支援を行う。また、愛知県大口町では、新紙幣に対応するため券売機の改修・更新を行った町内の中小企業者に補助金を交付する。補助率は対象経費の2分の1で、上限は50万円。
さらに、国が行っている事業再構築補助金やものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金などの活用も考えられるが、ただ新紙幣に対応するだけでは採択されない可能性もあり、生産性向上や新たな顧客獲得のための商品開発などが伴った取り組みが求められる。いずれにしても自治体や国の補助金について調べてみるといいだろう。
原材料の高騰などで経営が厳しくなる中、新紙幣に対応した券売機への改修・更新費用が増えるのは大きな痛手だ。補助金を活用する以外には、キャッシュレス決済を導入するのもひとつの方法だろう。決済手数料はかかってしまうが、初期費用は券売機の改修・更新の費用に比べると安く抑えられる可能性がある。これを機に決済方法を再検討してみるのもいいかもしれない。
■新しい日本銀行券特設サイト
https://www.npb.go.jp/ja/n_banknote/