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開業2年で月商1,660万円『渋谷きときと』。「先端マーケティング×情熱」の相乗効果

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来店投稿がずらりと並ぶInstagramの「#渋谷きときと」。「極・海鮮玉手箱」(1,280円)の重箱オープンや「A5氷見牛ユッケ」(1,700円)の卵黄を割る瞬間など映える動画も多数

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SNSマーケティングとホスピタリティの両立

人気メニューの写真や動画がおいしそうに並ぶ同店のタグ付け投稿。誰かの投稿が来店動機になり、訪れた人の投稿もまた誰かの来店動機になる。この連鎖が継続するのは、店の満足度が高く、客が自ら投稿したいと思うからこそ。おいしくて映えるメニューはもちろん、客の心を掴む接客もポイントだ。

「お客様がスマホを構えたら、すぐさまハンディライトで照らして撮影に協力しています。これをすると、『ものすごいホスピタリティですね!』と驚かれますね。お客様も喜ぶし、僕らもおいしそうに撮影してもらいたいので両者両得です」(坂野氏)

あえて口頭で伝える裏メニューがあったり、提供時には料理のこだわりや産地の補足説明があったり。スタッフの声がけにより料理の特別感をアップさせるなど、客との会話を重視した接客姿勢も効果的という。

ドリンクは3サイズを用意し、同じものが追加注文される際はサイズアップを促すなど、コミュニケーションを取りながら単価アップにもつなげている。

光を受けてキラキラ輝く「あざと可愛いフルーツサワー」(680円)も女子ウケ必至(写真提供:株式会社HENRY)

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結果的に21坪、席数56席の広さにも関わらず、2021年10月のオープン初月から黒字経営。売上は右肩上がりを続けており、2023年12月には最高月商となる1,660万円を記録した。

客層は20代女性の2〜4人組が中心。Instagramで発見し、食べログで予約するケースが多く、客単価は6,000円以上という。「お金をかけることに抵抗がないというか、そこまで価格を気にせずに飲食を楽しんでいるお客様が多いですね」と坂野氏。好きなことや大切なシーンに集中的に課金する、Z世代のお金の使い方の特徴が現れているのかもしれない。

学生アルバイトが憧れる、「イケてる飲食人」の背中

「QRオーダーや配膳マシーンで接客が省力化される時代であり、特に渋谷の飲食店にはハイレベルな接客は期待されてないかもしれません。それでもお客様は双方向のコミュニケーションを求めて来店されると思うし、働く僕らにとってもそこが楽しいところだと思う。だからアルバイトスタッフに求めるにはレベルが高いけど、お客様の心に残る接客を目指しています」(横手氏)

ホールスタッフのほとんどは大学生アルバイト。高い接客レベルを求めていることから「お金だけが目的なら、他の仕事のほうがいいよ」と面接時に釘を指しているそう。実際に『渋谷きときと』での仕事はやりがいや楽しさがあり、出勤日数と売上に応じたインセンティブもあるので、スタッフのモチベーションは高く、離職率も低い。来春には学生アルバイトから1名、正社員採用が決まっており、再来春には2名が続く予定だ。

1店舗目としては広すぎる物件だと知りながら、審査申し込みをしたという。「コロナ禍での不合理な意思決定が、結果的にいい方向にいきました」(横手氏)(写真提供:株式会社HENRY)

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松本ゆりか

ライター: 松本ゆりか

東京でWebマーケターを経験した後、シンガポールへ渡りライフスタイル誌やWebメディア制作に携わる。帰国後、出版社勤務を経てフリーライターに。主に中小規模ビジネスや働き方に関する取材・執筆を担当。私生活ではひとり旅とはしご酒が好きなごきげんな人。