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世界一の料理人マウロ・コラグレコさんが語る「東京でレストランを営む喜び」

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マウロさんが大切に手をかけているパーマカルチャーの「ガーデン」

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マウロさんの根幹にあるのは「山」と「海」、そして「ガーデン」

山と海と里山と。それが日本の食の原風景であるなら、マウロさんの根幹には山と海と「ガーデン」がある。

「『Mirazur』が最も大切にしているのは、おいしい料理と温かいおもてなしでお客様をお迎えして、お客様に幸せな体験をしていただくこと。その次に大切なのが家族とチームが幸せに働けること。そして自然と繋がるための“ガーデン”を育むことです」

かねてより『Mirazur』では、オーガニックの「ガーデン」で採集した野菜やハーブ、平飼いの鶏が産んだ卵といった自家食材、日本の「神経締め」の技術を伝えるなど信頼関係を築いてきた地域の漁師による魚介類を使うほか、イタリアとの国境にほど近い地の利を生かしてフランスとイタリアのふたつの市場に通い、志の高い生産者による良質な野菜やはちみつ、オリーブオイルなどを買い支えてきた。

農事暦に基づいた『Mirazur』のメニュー“ミラズール・ユニバース”より「葉」のコースのひと皿

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そんなマウロさんが今一度「ガーデン」と深く向き合う機会になったのがコロナ禍だった。自然農法を提唱する農学者の故・福岡正信さんの思想に出合い、自然が営む奇跡のように美しい循環(=Cycle。英語でサークル、フランス語でスィークル)にシンパシーを感じたことが、現在『Mirazur』が提供するメニュー“ミラズール・ユニバース”の農事暦に沿って変わる4つのコース「根」「葉」「花」「実」の確立に繋がった。

マウロさんから『CYCLE by Mauro Colagreco』を託されたヘッドシェフの宮本悠平さん

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日本に親しみを持ち、日本文化への理解を深めようとするマウロさんの周りには、自然の流れとして多くの日本人が集まっている。マウロさんの哲学である自然の循環を意味する“Cycle”を店名に掲げた東京店のヘッドシェフに抜擢されたのは、2019年に『Mirazur』のチームに加わり、帰国直前までマウロさんのスーシェフを務めた宮本悠平さんだ。開店時には、マウロさんの元スーシェフで現在はフランス・パリを拠点に世界で活躍する女性料理人・神崎千帆さんがマウロさんと共に来日。慌ただしいオープニングを支えた。

マントンでは、フラワーアーティストの高城美花さんがフラワーデコレーションを担当。マウロさんの代名詞でもあり、彼がプロデュースするすべてのレストランで共通するシグネチャーとして提供している「おばあちゃんのレシピのパン」をマントンで焼いているのも日本人ブーランジェだ。

マウロさんが世界各国でプロデュースする全店で唯一共通するシグネチャーとして提供される「おばあちゃんのレシピのパン」。『CYCLE by Mauro Colagreco』でも味わえる

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日本人シェフとも積極的に交流を持ち、『CYCLE by Mauro Colagreco』オープン直前には「自然の循環に合わせてガーデンの恵みを受け、ガストロノミーに昇華させる」という『Mirazur』と共鳴する“ガーデンガストロノミー”の体現者として『villa aida』オーナーシェフ・小林寛司さんを『Mirazur』に招き、自慢の「ガーデン」やイタリアのオーガニック市場を案内した。

「山の斜面に合わせてデザインされたガーデンは、パーマカルチャー(さまざまな植物が自然な形で共生すること)で観賞用としても美しい。また、地中海に向かって張り出すように設計された2階のダイニングは、お客様の目の前にキラキラした海が広がって眺めているだけでも心地いい。これは平らな僕の土地では難しいことなのでうらやましいですね」と小林さんは言う。

イタリア語が堪能な『villa aida』オーナーシェフ・小林寛司さん。マウロさんと宮本さんに案内されイタリアのオーガニックな食材に触れた

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この最高のロケーションと融合したダイニング経験も『Mirazur』の個性であり魅力のひとつだ。東京の中心でこの『Mirazur』らしさをどう表現するのだろう。

そのためのパートナーとしてマウロさんが選んだのが、千葉・鴨川のオーガニック農園「苗目」だ。鴨川のシェアファームの一画で『CYCLE by Mauro Colagreco』のチームが野菜やハーブを栽培するだけでなく、「苗目」のサポートを受けながら、なんと小さなガーデンを東京・大手町のビル街に造ってしまった。

「開業時にはまだまばらだった植物が半年でこんなに育ってくれました。これから東京の街並みと溶け合って、私たちらしい風景がつくられていきます」

マウロさんも信頼を寄せるオーガニック農園「苗目」代表・井上隆太郎さん

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shifumy 詩文

ライター: shifumy 詩文

旅するフードライター&インタビュアー。“ガストロノミーツーリズム”をテーマに世界各地を取材して各種メディアで執筆。世界の料理学会取材や著名なシェフをはじめ各国でのインタビュー多数。訪れた国は80か国以上。著書に『ほろ酔い鉄子の世界鉄道~乗っ旅、食べ旅~』シリーズ3巻(小学館)。