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浅草『Veganic Monkey Magic』、“脱ヴィーガン”の店主「心に栄養が届くヴィーガン料理を」

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ヴィーガンを卒業

『Veganic Monkey Magic』はその名の通り、ヴィーガン専門店であり、海外の予約者は100%ヴィーガンかヴェジタリアンであるのは当然であるが、国内は9割以上が非ヴィーガンである。そもそもヴィーガン料理は「ヴィーガンだけが食べる料理」「ヴィーガンしか食べてはいけない料理」ではなく「ヴィーガンも食べられる料理」と考えた方がいい。実際にヴィーガンではない筆者も料理と酒を楽しむことができる。

佐伯氏自身は一時期ヴィーガンであったが、数年前にヴィーガンをやめている。もともと環境保護志向からヴィーガンになったが、体調面で不具合が起きたことがやめる直接の原因となった。

「頭で考えて食事を選ぶスタイルは、味わって食べることから遠かったり、身体の“声”を無視することにつながったり、本来の『おいしい』からどんどん遠ざかります。そういう人たちをたくさん見てきました。そうやって食べても、心に栄養はいきませんよね」

店舗は民泊施設の1階にある

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以前、料理の集まりの場で着用し、一気に盛り上がった「さるっちゃまん」を再利用、ワンオペで客対応して店内を盛り上げているのは、楽しく食べてもらいたい、店の中に笑顔を多くしようという努力の表れでもある。今でもヴィーガン料理専門店としているのは、以前に共同運営していた店舗をヴィーガン料理に切り替えた時から、飲食店の運営には大きなメリットであると考えたこと、自身が野菜料理を一番得意としているため。魚や肉をメニューに加えるとキッチンの管理が難しくなる上、食中毒のリスクが増大するなどの理由もある。

自分自身の中でヴィーガンをやめたことで、見えてきたこともある。楽しく食べることの重要性はもちろんだが、それだけではない。たとえば、肉や魚を外で食べた時に、おいしいソースに出合ったとする。「これをヴィーガン料理にどうやって活用すればいいだろうか」と考え、メニューの中で活用できる。「ヴィーガンは肉や魚を食べませんから、バリエーションが狭まるというのはあると思います」と言う。それはヴィーガンが運営する店舗に対する優位性の根拠となりうる。

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角打ちコーナー付き自然食品店

獨協大で英語を学んだ佐伯氏は、店を始める時に英語でグーグルマップに紹介文を作成した。結果、海外からの客が増え、今では全体の8割以上を占める。異文化交流という点では大きな役割を果たしている。

そんな佐伯氏が夢見る将来像は自然栽培野菜等の自然食品の販売という。現在でも店舗の一角で物販を行っているが、これを本格的に扱いたいとしている。

「今、私がやっている店は試食のようなものです。『これおいしい!』と言ってもらった時に『これだよ』と示してその場で買ってもらえるのが理想です。ただ、売っているだけだと見慣れない物をなかなか買ってもらえません。そこで角打ちコーナー付き自然食品店を浅草にあるカッパ橋道具街のど真ん中でやってみたいと思っています。そこで飲食のプロに認められてその店に卸す、自然食品を扱う飲食店を増やせればいいなと思っています」

ヴィーガンを卒業した「さるっちゃまん」が真剣な表情で未来を語る、ユニークな姿と真摯な発言とのギャップには、思わず笑顔にさせられる。これも『Veganic Monkey Magic』の魅力のつであるのは間違いない。

佐伯敦子(さえき・あつこ)
獨協大学外国語学部英語学科卒業後、事務系の仕事を続け、2005年から食への探究を始める。2012年に駒込で自然栽培野菜のレストランを共同でオープン。2020年1月に『Veganic Monkey Magic』をオープンした。

■Veganic Monkey Magic
住所/東京都台東区浅草2-27-16(御宿 松むら1F)
営業時間/木19:00~22:00、金・土12:00~14:30/19:00~22:00
定休日/日~水
予約/完全予約制(公式LINEから)
https://www.instagram.com/veganic_monkey_magic/

■参考文献
杉山修一 遠嶋凪子. 自然栽培と慣行栽培野菜の化学成分の比較 弘大農生報 No.18 2016 P.1-6,

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/