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浅草『Veganic Monkey Magic』、“脱ヴィーガン”の店主「心に栄養が届くヴィーガン料理を」

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エグ味の正体「硝酸態窒素」

自然栽培については複数の機関で研究が行われており、各栽培の違いは葉に蓄積される硝酸態窒素(NO3-N)に顕著に現れるという。弘前大学農学生命科学部学術報告に掲載された論文には以下の記述がある。

「慣行栽培や一部の有機栽培で作られた野菜は土壌の窒素過多のために硝酸態窒素を多く含むことが知られている。それに対して、自然栽培は家畜糞尿由来の窒素分の多い堆肥の使用も制限されるために、作物は窒素欠乏の状態で生育を強いられ、多量の硝酸態窒素が葉に蓄積することはない。硝酸態窒素は健康にも悪影響を与えるが、苦味をもたらす成分として農産物の食味も低下させる。…作物生育時の土壌の窒素条件は、広く農産物の食味に影響を与える可能性がある。実際に、自然栽培で作られた米や野菜、果実は慣行栽培のものにくらべて食味がよいという意見を聞くことが多い…」(2015,杉山・遠嶋)

大黒舞茸のカリカリ焼き

前述の研究は自然栽培と慣行栽培の野菜に含まれる成分についても検証している。甘み成分となる還元糖(グルコース、フルクトース、スクロース)と旨味成分のグルタミン酸、酸味をもたらすリンゴ酸・クエン酸、また、食味にマイナスの影響を与える硝酸態窒素と健康に良いとされる抗酸化能(DPPHラジカル消去能)を10種の野菜(リンゴ含む)ごとに示している。化学成分の比較では野菜の味にプラスになるものは自然栽培に多く、逆に味にマイナスとなる硝酸態窒素は自然栽培の方が少なくなっている。

「自然栽培ではグルコースとグルタミン酸が有意に高くなり、硝酸態窒素が有意に低くなった。成分含有量の結果から自然栽培の野菜が一般に甘みと旨味成分を多く含む傾向が示され、自然栽培野菜が美味しいという意見を裏付けた」(同)

こうしてみると、佐伯氏の主張する自然栽培野菜の慣行栽培に対する味覚や熱調理性での優位性は、含有成分の違いに裏打ちされた根拠あるものと言っていい。

人気の「大黒舞茸のカリカリ焼き」

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店舗で人気の料理の1つに「大黒舞茸のカリカリ焼き」がある。舞茸に天然菌玄米塩麹(しおこうじ)を絡めて揚げ焼きしたもので、舞茸の傘の方は柔らかめのポテトチップスを食べている感じで、根元の方はタンパク質の食品、たとえば白身魚、鳥のささみのような食感、味わいがする。少しついた焦げ目がアクセントになり、ほどよい歯応えで風味が口の中に広がる。「新潟県南魚沼の大平きのこ研究所の小屋で手作業で管理されたプレミアムな舞茸です」と佐伯氏は説明する。

この舞茸と塩麹とのハーモニーが出色。塩麹とは麹と塩、水を混ぜて発酵させた調味料で、塩辛いだけでなく旨みがあると言われる。実際に食べていると、塩のような“尖った塩辛さ”ではなく、味がマイルドで塩麹だけを舐めてみたいという感覚に襲われる。「天然菌(麹菌)を復活させた福井県のマルカワみそさんで売っている玄米麹を仕入れて、塩麹をつくっています。塩麹には塩にはない旨みがあります。玄米麹からだと、お米の旨みも加わります」と調味料にもこだわりを見せる。「最近は海外のお客様でも、これを楽しみにしてくださる方もいらっしゃいます。『自分の国にはないから』と言ってくれます」と続けた。

舞茸の量はおよそ80グラムとかなりボリュームがある。豊かな風味から酒が進むのは間違いない。自身がお酒好きと言う佐伯氏は「呑兵衛がつくるとこうなってしまいます」と笑う。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/