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下北沢の“大人たち”が集う『meso』。経営の根幹は「シェフが輝く新しい飲食店の構造」

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ビーツでより赤みを増したマグロが鮮やかな「マグロのビートルートマリネグリル 山わさびの胡桃醤油ソース 」(2,980円)。五味五色を巧みに使い“ひとくせ”を演出※季節によりメニュー変更の可能性あり(写真提供:株式会社シェフズバンク)

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お客もシェフもスタッフも、すべてが一つになれる劇場型レストラン

『meso』では、そのメッセージを一貫してあらゆる面で表現する。核となる料理は、フレンチをベースにアジアや中東など、さまざまな国のエッセンスを取り入れたモダンフュージョン。「いつもの味に、ひとくせを」をテーマに、都内のホテルやオーストラリアのレストラン、調理師学校での講師など幅広い経験を持つ原島正幹シェフが、国の垣根を超えた一皿でお客を魅了する。

また、異なる思想や嗜好を持つ人同士が同じ食の時間を共有できるようにと、ヴィーガンメニューもラインナップ。「誰も我慢せず、誰も排除せず、ボーダレスにみんなで“楽しい”食の時間を共有してほしい」と桑原氏は話す。

空間づくりにも『meso』ならではの演出が。客席と厨房をシームレスにつなぐフルフラットカウンターを備え、その間に隔たりは一切なし。お客は席につくと、包丁さばきや盛り付けが目と鼻の先で見られることはもちろん、火口や洗い場まですべてが見え、まるで厨房の中にいるかのような感覚さえ覚えるだろう。いわば、お客、シェフ、スタッフが一つになって食を楽しむ劇場だ。

ナチュラルワインはグラス1杯40〜80mlと量を変え一律価格に。「ナチュールはこれから日本に根付く文化。ハードルを下げて浸透させたい」(桑原氏) 

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「究極のところ、味覚は主観です。だからこそレストランは、エンターテインメントの場だと思っています。シェフは、ミュージシャンや芸術家と同じく特別な技術を持つパフォーマーであり、その力を一番発揮できるのが厨房。なのに隠していたらもったいない。洗いものやスタッフ同士のコミュニケーションもすべて、彼らの個性が現れるパフォーマンスの一つです。それを肌で感じてもらうことで、一体感やライブ感が生まれ、お客さまの満足度はもちろん、シェフの職業的価値も上がると考えています」

シェフが自分の力を最大限に表現できる環境づくりが必要

桑原氏が率いるシェフズバンクはこれまで、長年培ったプロデュース力やコンサルティング力を武器に、お客が料理の価格を決める『値決め食堂』、独自の自立型創業支援システムなど、さまざまな視点からシェフや飲食店経営者の支援を行ってきた。街のニーズを汲み取るスキル然り、時代の流れを捉えたマーケティング力、ブランディングの視点は『meso』を見ても明らかだが、組織づくりにおいても例外ではない。

それが、オーナーとシェフとの関係性の在り方にある。『meso』では、独自のパートナーシップを築くことでフラットな立ち位置にいるという。シェフは一般的なオーナーシェフと同様に、原価や人件費、売上など、料理人としてコントロールすべき点を自身の裁量で決め、シェフズバンクは運営会社としてマーケティングや販促・運営のバックアップ、客観的視点での調整・サポートなどに従事し役割分担。そうすることで、シェフは強力なサポート体制のもとで自分の表現力を最大限に発揮し、運営にも主体的に携われるというわけだ。

同社ではシェフのマッチングサービス「シェフマ!」も運営

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桑原氏は、さまざまな飲食店ビジネスを手がける中で、新しい飲食店の構造が必要だと感じてきたと語る。

「働き方改革、物価や地価の上昇、コロナ、円安……、今、飲食業を取り巻く状況は刻々と変わり、収益モデルも大きく変化しています。その中で、店を構えるリスクを料理人ひとりが担うのはあまりに代償が大きい。このままでは飲食業界で働く人はますます減るでしょう。そんな未来と向き合った時、お互いが自分の力を活かせる関係性の構築が必要だと思ったんです」

「我々とシェフは、一緒に店を盛り上げる“一つのチーム”」と語った桑原氏。ここにもまさに、ボーダレスの精神が息づいている。

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山本愛理

ライター: 山本愛理

フリーライター・エディター。WEBを中心に食にまつわる記事を執筆。 昔ながらの喫茶店から星付きレストランまで、美味しいものを通して幸せな時間を提供してくれる人の声と熱を届けるのが好き。空いた時間はもっぱらカフェ巡り。