『渋谷きときと』の新業態『渋谷ぴーくる』始動。「8坪」を最大限に活かした体験価値とは?
シミュレーションを重ね、「8坪」を最大限に活かした店づくりを実現
21坪の広さがある『きときと』と違い、8坪という小規模の『ぴーくる』。できるだけ客数を確保するために当初はオールスタンディングも検討したというが、高客単価を狙うにはしっかりと食事ができる環境を整えたいと、最終的に着席スペースを加えた構成を選択した。『きときと』での経験を活かし、内装業者と何度も議論を重ね導線をシミュレーション。できる限り無駄なく・効率良く店を回せるよう食材や調理器具、器の配置を念入りに検討しながら、全ての客席に手と目が届く造りを徹底したという。
「単価を上げるといっても、ただ高い値段で提供したところでお客さまの支持は得られません。この店の最大のメリットは、厨房から常に全てのお客さまの顔が見え、直接的なコミュニケーションがとれること。それを活かし切るためにも『体験価値』を重視しています」(横手氏)
料理は全て、厳選した食材を使ってお客の目の前で作るライブスタイル。あえて1ポーションは1個盛りや少量に設定して人数分のオーダーを促すが、その分、確実に満足してもらえるよう一切妥協なく高いクオリティに仕上げ、一人一人個別にサーブするなどして特別感を演出する。また、何より意識しているのは、全てのお客への気配り・目配り・声がけだ。コストパフォーマンスより体験による満足度を高めるためにも、お客とのコミュニケーションは常に心がけているという。
「作りたての料理が目の前から直接手渡されるライブ感や、僕らスタッフとの会話は『きときと』ではなかなか提供できなかったものです。この規模の店の醍醐味ですし、僕らのスキルが試される部分でもある。刺激や学びがたくさんあります」(坂野氏)
目指すは、渋谷で唯一無二のポジション
『ぴーくる』が目指すのは、渋谷の飲食店における新たなポジションの確立だ。次々と新しい店がオープンするこの街で淘汰されないためには、唯一無二の存在でなければとふたりは話す。
「イメージは、立ち飲み屋とビストロに渋谷のカルチャーを融合させたクリエイティブなバルです。パッと見は飲食店だと分からない遊び心ある店構えだけど、入ってみたら『料理も酒もめちゃくちゃうまい!』というギャップを楽しんでもらいたいですね」(坂野氏)
「渋谷だからできる挑戦だし、渋谷だから受け入れてもらえると思っています」(横手氏)
外観だけでなく、器、ユニフォームまで、グラフィックなデザインにこだわった店づくりも、背伸びをしたい20代〜30代のお客から、普段使いのアッパー層まで、幅広い客層を狙うための戦略の一つ。外国人観光客や同業者からの評価も高く、オープンから1か月半、確かに手応えを感じているようだ。
