10年で売上2倍の代々木上原『SARU』。魚介×ワインで坪月商60万円越え
11年かけてメニュー厳選など試行錯誤。売上2倍の月商600万円を達成
現在オープンから11年が経ち、『SARU』の月商は600万円、坪月商60万円という繁盛店となっている。しかし「当初は今の半分ほど、月商300万円ほどしか売上がありませんでした」と猿田氏は振り返る。この11年をかけて、大小さまざまな試行錯誤を重ねてきたという。
その代表的なものの一つが、メニュー数の厳選だ。創業当時に比べ半数に絞ったという。
「アラカルトレストランとしては数が少ないかもしれませんが、ロスを出さずにおいしい料理を提供するために今の数に絞りました。新規のお客さまもリピーターのお客さまも楽しめるよう、定番7割、四季で内容が変わるシーズナルメニューを3割ほどで構成しています」(猿田氏)
二つ目が、フードとドリンクの平均原価率を27.5%以下に抑えること。同店の名物であり新規客のほぼ100%がオーダーする「鮪希少部位ロースト(200グラム)~リンゴの木の香りで~」(1,800円)は、元々知り合いの漁師から「値段がほとんどつかない尻尾などの部位を何とか活用できないか」と相談されたことがきっかけで生まれたメニューだ。そのため仕入れ値が驚くほど安い。
このように低原価の商品を名物に据えつつ、原価率の高いメニューも取り入れ、全体で原価率を27.5%以下に抑えられるよう、こまめに価格改定を行ってきた。また、食材やドリンクを『SARU』グループ3店合同で仕入れることで、仕入れ値を下げる工夫もある。
料理の価格帯はアペロが700~1,200円、冷菜・温菜が1,600~2,100円(バケットは300円)、メインが2,000~3,200円、デザートが800~900円。二人で来店した場合前菜2~3品、メイン1品、デザート一人1品ずつを頼んでちょうど良い量としている。現在客単価は8,000円ほどだ。
また、5人以上のグループへは5,000円のコースを提案。月に2組ほどとそこまで多くはないが、あらかじめメニューを決めておくことで、営業時のスタッフの負荷を下げている。

名物メニューの「シーフードコブサラダ~海苔ドレッシングで~」(右、1,600円)と幸田シェフ考案のシーズナルメニュー「炙り秋刀魚とビーツのカルパッチョ」(左、1,900円)、グラスワインは900~1,500円
28歳の料理長が活躍。若手スタッフのアイディアも尊重
同店の料理長である幸田氏は、2024年1月の就任当時27歳という若手だ。統括料理長であり、グループ店舗でモダンタイレストラン『タレーリン』の料理長である渡部雄氏も20代後半と、若手シェフの躍進が目覚ましいのもRootの特徴だ。
「お客さまの満足度や売上などの数字についてはチェックしていますが、それ以外は若手スタッフを含め、自由に働いてもらっています」と猿田氏は語る。
幸田氏は、辻調理専門学校(うち1年フランスへ留学)を卒業後、神楽坂にあったホテルのレストランと宴会担当の料理人として約4年勤務。コロナ禍でホテルがクローズすることになり退職後、求人サイトを通じて2020年8月にRootに入社した。当初は代々木上原の『SARU』で1年働き、自由が丘の『SARU』で1年経験後、2024年1月に料理長として代々木上原『SARU』に戻ってきた。
「個人的にメニュー開発を進めていたときに料理長への昇進の話をいただいて、これはいい機会だと思い挑戦させていただきました」と幸田氏。シーズナルメニューにもスパイスやフルーツ、ハーブ使いなどが生かされており、すでにシェフらしさが料理に反映されてきている。
「まだまだメニューを作りこんでいる段階ですが、お店らしさと自分らしさをもっと表現できるようになり、地域に浸透したお店にしたいですね。シェフが変わったことはあまり広まっていないので、今後もっと知っていただけるように頑張りたいです」と幸田氏は意気込む。
