夫婦経営で月商200万円の南長崎『氵(さんずい)』。燗酒とスパイス料理で酒好きを惹きつける
スパイス使いが光る料理を手ごろな価格で提供
料理は18〜20種類と決して多くはないが、メニュー表には酒好きが思わず注文したくなるような料理が並んでいる。料理は高くても1,000円台後半、ほとんどが1,000円以下という手軽さも魅力だ。鈴木氏が海に面した兵庫県赤穂市の出身ということで、魚を使った料理が中心だが、クローブやオールスパイス、カルダモンなど7種類のスパイスを使った「手羽中 スパイス唐揚げ」(770円)や、「ラム スパイスマリネ ロースト 焼き野菜」(1,650円)など、スパイスを活かしたメニューが目を引く。
中でも「〆スパイスカレー」(880円)はその名の通り、〆の料理として人気がある。開業前から『理化学研究所』内の施設で週2回、スパイスカレーを提供する仕事も行なっており、『氵』でも同じメニューを出すようにしたのだという。このスパイスカレーに絞ったランチ営業も地元のお客から好評を得ている。
都心での物件探しが難航、庶民的な雰囲気が残る南長崎に
店がある西武池袋線の東長崎駅から、都営大江戸線の落合南長崎駅にかけてのエリアは、手塚治虫をはじめとする有名漫画家が住んでいた『トキワ荘』があったことで知られ、昔ながらの商店街が広がる地域。昨今では若い世代による飲食店のオープンが続く注目エリアの一つになっている。ただ、鈴木氏は当初、このエリアでの開業を考えていなかったという。
「山手線の内側や中央線沿線で物件を探していたのですが、これまで5軒の物件に決まりかかったもののすべて途中で契約が頓挫してしまったんです。2年かかっても物件が決まらなかったので、消去法で自宅のある新井薬師の近隣へ目を移し、この場所を見つけました」
見つけたのは15坪のカフェの居抜き。追加したのは冷蔵庫やワインセラー程度で、元の造作をほぼそのまま生かしたカジュアルな雰囲気だ。黒板メニューの下で存在感を放つレコードプレーヤーやアンプ、スピーカーもカフェから引き継いだもので、営業中にシティポップやジャズなど様々なジャンルのBGMを流している。また、小鹿田焼の専門店「小鹿田焼ソノモノ」が同じ東長崎にある縁で同店から器を購入。どんな料理とも相性が良いので、今後さらに増やしていきたいという。
客席はカウンター3席とテーブル14席。厨房をはじめとするバックヤードのスペースが広く、大量の飲料をストックできるのがメリットだ。一方、動線の面ではその広さがデメリットに。当初は一人で切り盛りする予定だったが妻がサービスを手伝い、料理も営業中に仕上げだけすればよいものや盛り付けるだけのもので構成している。
