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客であふれ返る“酒屋”、神田『キャリカーズトーキョー』。ポップでディープな角打ち成功の裏側

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角打ちの原価率はワイン4割、ビール・日本酒は3割ほどに設定。店では若い頃から集めたお猪口が活躍

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角打ちは戦略。攻めの姿勢で「利益担保」「購買促進」「ロス0」を実現

一方で、角打ちを設けることは当初からの計画だったと振り返る。目的は二つだ。

一つは、利益の確保。飲食店では一般的に3割といわれる原価率も、酒屋では6割超えが当たり前。酒屋の利益構造のシビアさを先人たちから聞いていたからこそ、工夫は必然だったと語る。

もう一つは、店に並ぶほとんどがやや高価格でニッチな品のため、「試してもらわないと買ってもらえない」からだ。

白石氏に接客の様子を聞くと、まるでカウンセリングのようにお客の好みをヒアリングし、個々人に合った提案を、実に軽快に気前よく行っていることがうかがい知れた。そもそも、あえて“酒屋”に来るお客だ。それなりにコアな酒好きであることは間違いない。ただ、お客が持つ以上の知識や理論を伝え、実際に試飲して体感してもらうことが、酒屋としての腕の見せどころだと意気込む。

「とはいえうちは酒屋ですから、『買う』までが体験価値だと捉えています。『気に入ったのがあったら買ってね!』という声がけは欠かしませんし、ハイクラスの酒でも楽しく飲んでもらうことで、最終的に購買につなげたい考えです」

現在の目安は、試飲5杯で購入1本。ロスを恐れて他店でも飲める手頃なものを試飲してもらうより、きちんと価値を伝えながら高価なものも提供し、売り切る方が圧倒的に採算が取れてロスも出ないというのが白石理論だ。

「結局、皆さんが飲みたいのは『他で飲めないもの』『飲んでみたかったもの』。ならそれを飲んでもらって買ってもらう。そうすればwin-winじゃないですか」

「小難しいお酒が多いからこそ、ポップに」を意識。するとコミュニティは自然とできていったそう

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拠点をつくったら、点と点がつながって、ポップで濃厚な「基地」ができた

最後に白石氏は、『キャリカーズ』を開いたことで、全国各地から自然と人・お酒・情報が集まる「基地」ができたと話してくれた。これまでは自らが各地の酒屋やつくり手の元へ行く立場だったが、それが知らず知らずのうちに種撒きとなり、今、返ってきているというのだ。

「酒屋に通ったことも音楽活動で全国を飛び回ったことも、結果、今に結びついている。無数の点と点がつながって、大きな円になった感覚です。『東京に行くなら、白石の店寄ってみなよ』『白石なら、この酒出すよ!』がループして、どんどん店が賑わっていくんです。やっぱり今も、人に助けられてますね」

常に笑顔で気さくにふるまう白石氏だが、「酒に嘘はつきたくない」という、誰よりも真摯な姿勢を皆知るからこそ、酒好きたちはここへ集うのだろう。酒を愛する店主が生み出す、ポップでディープなうねりは、まだまだ大きくなりそうだ。

直近の目標は、つながりのあるつくり手や飲食店を集めた「キャリカーズ・フェス」の開催

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『Caliquors Tokyo(キャリカーズトーキョー)』
住所/東京都千代田区神田紺屋町28 紺屋ビル101
TEL/050-3565-6588
営業時間/15:00〜24:00
定休日/不定休
坪数・席数/8坪・立ち飲み約20席

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山本愛理

ライター: 山本愛理

フリーライター・エディター。WEBを中心に食にまつわる記事を執筆。 昔ながらの喫茶店から星付きレストランまで、美味しいものを通して幸せな時間を提供してくれる人の声と熱を届けるのが好き。空いた時間はもっぱらカフェ巡り。