東京都がカスハラ防止条例を4月1日施行。飲食店へも奨励金・補助金40万円給付
4月1日、東京都で「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」(以下、カスハラ防止条例)が施行された。今回は、東京都のカスハラ防止条例の概要と、カスハラ防止対策に対して要件を満たせば飲食店事業者へも支給される奨励金・補助金について紹介する。
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東京都のカスハラ防止条例とは
顧客からの著しい迷惑行為であるカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)が社会問題となっている中、東京都は4月1日、カスハラ防止条例を施行した。カスハラ防止条例は、小池百合子都知事が2024年2月に制定の検討を表明し、2024年10月に制定された。同条例では「何人も、あらゆる場において、カスタマー・ハラスメントを行ってはならない」としており、事業者、就業者、顧客等それぞれにカスハラを防止する責務を定めている。なお、条例の対象となる事業者は、都内で事業を行う法人、その他の団体、国の機関、個人事業主で、就業者や顧客等については都民か否かは問われない。
事業者は、カスハラ防止について主体的・積極的に取り組むことが求められており、就業者がカスハラを受けた場合、顧客等に対してカスハラを行わないよう必要な措置を行わなければならない。就業者については、カスハラに対する理解を深め、カスハラが起こらないような行動をとることが求められる。また、顧客等においては、就業者に過失などがあったとしても、怒りを抑えて冷静に改善を求めることが重要だとされている。
一方で、「この条例の適用に当たっては、顧客等の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない」としており、障害者などの配慮が必要な人の権利にも留意することが大切だ。
また、各業界団体がカスハラ防止への対応を示すマニュアルを作成するために、東京都では「カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル」も作成しているので参考にしてほしい。
カスハラ防止対策を行った都内企業向けに、40万円の奨励金支給も
東京都では、カスハラ防止条例の施行に伴い、企業・団体向けの奨励金・補助金を設けるとしている。飲食店事業者が受けられるのは6月募集開始予定の企業向け奨励金で、従業員300名以下の都内の中小企業が対象だ。3年間で1万社の規模で行われる。
条例が施行された4月1日以降、カスハラ防止のためのマニュアルを整備し、実践的なカスハラ防止対策を行った企業に対し、40万円の奨励金を支給。カスハラ防止対策マニュアルを作成することと、カスハラ防止対策を行うことが奨励金の支給要件だ。カスハラ防止対策には、「録音・録画環境の整備」「AIを活用したシステム等の導入」「外部人材の活用」のいずれかひとつを実施することとされている。
「録音・録画環境の整備」は、防犯カメラを設置したり、録画・録音をを行うことをあらかじめ伝えておくといった作業。「AIを活用したシステム等の導入」は、顔認識モニタリングシステムの導入など。「外部人材の活用」は外部専門家によるカスハラ研修などが挙げられるだろう。
なお、団体向けには、会員企業及びその従業員向けに防止対策の体制を整備した場合に最大100万円の奨励金(上限30件)を設け、防止対策と条例の普及に都と連携して取り組む団体に対しても、上限5,000万円(補助率1/2)の補助金(上限10件程度)が設けられている。
飲食店においては、さまざまな状況でカスハラが発生する可能性があるため、従業員を守り健全な営業をするためにも、カスハラ防止マニュアルの作成といった対策は必要だろう。企業向け奨励金も活用し、カスハラが起こらないように対策を進めていってほしい。
