飲食店ドットコムのサービス

職場の熱中症対策が罰則付きで義務化。飲食店事業者が今すぐ取り組むべき対策とは?

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

画像素材:PIXTA

画像を見る

2025年6月1日、職場での熱中症対策が事業者の義務となった。本記事では、法改正の内容と罰則、そして飲食店事業者が取るべき実践的な対策を解説する。

>>飲食店“専門”の求人サイトだから即戦力が見つかる。社員とアルバイトまとめて19,800円で掲載可!

事業者に義務付けられた「3つ」の熱中症対策

厚生労働省の調査によると、2024年に熱中症で4日以上休業した労働災害は1,195件を超え、死亡者も30人以上に上った。多くのケースで初期対応の遅れや不備が原因とされており、これまでの自主的な対策だけでは限界があったといえる。

こうした背景から、厚生労働省は労働安全衛生規則を改正し、一定の条件下で熱中症予防の取り組みを企業に義務付けた。

改正の目的は、職場での熱中症を早期に発見・対応し、重症化や死亡事故を防ぐことにある。今回の改正で、事業者には以下の3点が新たに義務付けられた。

1. 早期発見のための体制整備
作業者に熱中症の兆候が見られた際、誰に・どのように報告するかのルールをあらかじめ明確にし、緊急連絡先や担当者を定めておく。

2. 重篤化防止のための対応手順
報告を受けた際の応急対応をマニュアル化する。作業中断の判断基準、身体の冷却方法、医療機関への搬送フローなどを具体的に明文化しておくことが重要だ。

3. 関係者への周知と教育
上記1、2で定めた体制・手順について、全従業員に資料配布だけでなく教育・訓練も実施し、実践的な理解を促す。これにより、初期症状の把握と対応力の強化を図る。

このように「見つける」「判断する」「対処する」という一連の仕組みを事前に整備し、それを全労働者に徹底することが、今回の義務化の核心だ。

義務化の対象は?違反した場合は罰則も

今回の義務化の対象となるのは、「WBGT(暑さ指数)が28度以上、または気温が31度以上となる場所で、『連続1時間以上』または『1日4時間超』の作業を行う全ての事業者」だ。屋外・屋内を問わず、高温多湿な厨房での業務が多い飲食店も当然含まれる。

義務に違反した場合、労働安全衛生法第119条に基づき、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性がある。従業員の安全と事業の信頼を守るためにも、法令遵守と万全な対策が不可欠だ。

画像素材:PIXTA

画像を見る

飲食店が取り組むべき4つの具体的対策

飲食店が講じるべき主な対策を、4つの視点から紹介する。

1. 体制整備と初期対応
報告ルートや応急処置の手順をマニュアル化し、全スタッフに周知する。兆候に気付いたら速やかに報告し、冷却・休養・搬送といった行動に繋げる体制を整える。

2. 厨房環境の改善
排気設備の増強やフィルター清掃、省エネ調理機器の導入などで厨房内の暑熱環境を緩和する。スポットクーラーなども併用し、作業空間の温度上昇を防ぐことが重要だ。

3. 作業時間と休憩管理
1時間ごとに小休憩を入れ、冷房の効いた休憩スペースを確保する。忙しい時間帯は、短時間の水分補給タイムを設けるだけでも予防効果が高まる。

4. 個人の装備と備え
通気性の高い素材や、冷感素材のユニフォームを導入するほか、水分・塩分補給の習慣化、互いの体調を確認し合う声かけも重要だ。これらを徹底することが、スタッフの健康と安全な営業に繋がる。

法改正を機に、安全で信頼される職場へ

熱中症は、正しい予防と初期対応で防げる災害だ。従業員の健康を守ることは、安全な職場づくりとお客からの信頼に直結する。この法改正を機に、改めて店舗環境を見直し、「安心して働ける店」を目指したい。

厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」

この記事は役に立ちましたか?
はい いいえ
Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
すずきあゆみ

ライター: すずきあゆみ

フリーライター。飲食業界で約8年にわたり接客・調理に携わった経験をもとに、現場目線を大切にした取材・執筆を行っている。現在は食・暮らし・働き方を中心に、インタビューやコラムなど幅広く執筆中。 https://www.instagram.com/ayumisuzuki__/