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日本酒×和食でビブグルマン選出。代々木上原『笹吟』が示す、事業承継の「壁」の乗り越え方

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右手前から時計回りで「ホタテと金時草とパインのりんご酢和え」(950円)、「鯛の薄造り」(1,800円)、「鯛茶漬け(黒胡麻)」(950円)、「鴨といちじくのブルーチーズ和え」(950円)

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「和え物」に焦点を当てたメニュー改革と、日本酒体験のアップデート

新生『笹吟』がまず着手したのは、メニューの最適化だった。かつては焼き鳥なども提供していたがこれらを整理し、店の最大の強みである「和え物」に、よりフォーカスした。

「料理長の高柳は、客単価3万円クラスの日本料理店で腕を振るってきた実力者です。彼が作る料理は、一品一品が本当に丁寧。特に、旬の食材を活かした和え物は、和食の既成概念にとらわれない自由な発想が光ります。この強みをさらに伸ばすため、和え物の種類を15種から20種へと増やしました」(近藤氏)

和え物メニューに加え、お食事、お造り、焼き物、煮物、早出しと品数豊富

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「鴨といちじくのブルーチーズ和え」や、季節の果物を使った白和えなど、独創的ながら日本酒に寄り添う料理が並ぶ。一方で、「天然鯛の薄造り」や「鯛茶漬け」といった創業以来の名物は、その質をさらに高めて看板料理としての存在感を強めている。客単価は7,000円前後と、先代から大きく変えていない。この価格帯で本格的な和食が楽しめる価値は、店の大きな魅力であり続けている。

左から「上喜元」、「倉本」、「長珍」、「醴泉」、「森嶋」。フルーティーなものから、キレのある辛口まで幅広い日本酒がそろう

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日本酒の提供方法にも、二代目・田中氏ならではの工夫が加えられた。

「常時70種類ほどの日本酒を揃えていますが、色々なお酒を楽しんでいただきたいという思いから、従来の1合(180ml)だけでなく、半合(90ml)での提供を始めました。また、私自身が得意とする『燗酒』も強化しています。酒燗器を導入し、温度帯による味わいの違いを提案できるようにしました。夏でも燗酒をおすすめしています」

器はあえて昔ながらの猪口(ちょこ)や徳利を使い、伝統的な空気感を残す。枡の中にグラスを置いてあふれるほど日本酒を注ぐ「もっきり」も健在。こうした細やかな配慮が、以前からのファンを安心させ、新しい客層には新鮮な体験として映っているようだ。

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経て2017年よりフリーライター&編集者として活躍。『食べログマガジン』『Web LEON』『Numero.jp』などで、グルメや旅記事を執筆中。