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日本酒×和食でビブグルマン選出。代々木上原『笹吟』が示す、事業承継の「壁」の乗り越え方

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酒燗器を導入し、田中氏がつけた燗酒も提供するようになった

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客層に変化の兆し。SNS発信で新たなファンを獲得

2月の承継開始から約半年。「店の客層にも変化が現れている」と田中氏は話す。

「先代の頃は50~70代の男性のお客さまが中心で、17時台から席が埋まることが多かったですね。今は、当日予約や18~19時台に来店される方が増え、女性比率やご家族連れも増加しています」

この変化を後押ししているのが、情報発信の強化だ。先代の頃はほとんど手つかずだったSNSの運用を本格化させた。日本酒の専門家である田中氏ならではの、少し硬派だが丁寧な言葉で、季節の料理と日本酒のペアリング、燗酒の魅力などを発信している。

「常連のお客さまが驚かれないよう配慮しつつも、新しいお客さまに向けて『笹吟』の魅力を丁寧に伝えていく。そのバランスを大切にしています。今後は、酒蔵さんや近隣の飲食店と連携したイベントも企画していきたいですね」(近藤氏)

日本酒は半合530円~、一合830円~。現在も成田氏が懇意にしていた下落合の「味ノマチダヤ」からメインで仕入れている。

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目指すは「坪月商35万円」。30周年に向けた未来図

現在の月間売上は約440万円、坪月商にして約20万円。これを、まずは先代のピーク時と同水準である「坪月商35万円」まで回復させることが当面の数値目標だ。

そして、その先に見据えるのが、2026年7月7日に迎える創業30周年という大きな節目。近藤氏は未来図をこう描く。

「理想は、30周年を迎えるまでの間に店舗を改装すること。空間をアップデートすることで、二代目の『笹吟』の色を明確に打ち出したい。ハードが変われば、お客さまにも新しいステージに入ったことを感じていただけるはずです」

日本酒のほか、九州の本格焼酎から国産ワイン、ノンアルコールまでドリンクの種類は幅広い

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先代への敬意も忘れない。創業者である成田氏は、今も月に数回、お客として店を訪れると田中氏は言う。

「今後は、成田さんが来店する日を事前に告知することも考えています。成田さんは現役時代、営業中にお酒を一切飲まなかったそうなので、卒業した今、一緒に酒を酌み交わしたかった常連さんにとっては、これ以上ないファンサービスになるはず。事業承継が、関わる人すべてにとってプラスになる。そんな理想的な形を追求していきたいですね」

伝統の味と心を守りながら、新しい時代の風を取り込む。事業承継という険しくもやりがいに満ちた道を歩む『笹吟』の挑戦は、まだ始まったばかりだ。

『笹吟』
住所/東京都渋谷区上原1-32-15 第二小林ビル1階
電話番号/03-5454-3715
営業時間/17:00~23:00(フードL.O.21:45、ドリンクL.O. 22:30、焼き物・煮物・土曜日限定メニューはL.O.21:00)
定休日/日曜・祝日
坪・席数/22坪・37席
https://www.instagram.com/sasagin_yoyogiuehara/

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経て2017年よりフリーライター&編集者として活躍。『食べログマガジン』『Web LEON』『Numero.jp』などで、グルメや旅記事を執筆中。