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年収1,000万円プレーヤーを輩出する『活惚れ』。飲食業界の常識を覆す人材戦略

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「社員紹介、アルバイト紹介制度もあり、インセンティブも設けています」と松永氏

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「任せる文化」と「仕組み化」で、個の成長と組織の再現性を両立させる

『活惚れ』では、入社後の人材育成と定着にも独自の工夫が見られる。その一つが、店長への大幅な権限移譲だ。メニュー開発を含め、店舗運営の裁量はそのほとんどが店長に任されている。

「私自身が5店舗を立ち上げる過程で学んだのは、『任せること』の重要性でした。2店舗目を出すとき、1店舗目を離れるのは正直不安でした。しかし、任せられたスタッフたちが想像以上に店を盛り立ててくれた。過保護に接するのではなく、信頼して任せることが、人の成長を最も促すのだと実感しました」

一方で、属人化を防ぎ、組織として味のレベルを維持・向上させるための「仕組み化」も同時に進めている。特に、経験豊富な板前の技術を会社の資産として共有する取り組みは重要だ。

「腕のある料理人は、レシピ化するのが非常に上手です。彼らが作ったレシピを全店で共有することで、誰が作っても味がブレない再現性の高い料理を提供できるようになります。また、餃子やスッポンの春巻きといったメニューは、一か所で集中して製造し、冷凍して各店舗に配送するようにしました」

腕の高い料理人のレシピによって生まれた「大判焼餃子」。器も選りすぐり、一皿の満足度を上げている

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スタッフの定着率を高めるための施策は多岐にわたる。まず、店舗間の異動を柔軟に行うことで、ミスマッチによる離職を防ぐ。『活惚れ』は5店舗それぞれに個性があり、回転率重視の店舗もあれば、高単価でゆったりと過ごしてもらう店舗もある。最初に配属されたお店とは相性が良くなかった人でも、別の店舗でならその個性を活かせる可能性があるのだ。実際に店舗を異動したことで、以前より活躍するようになったスタッフもいるという。

「『人は簡単に見つかるものではない』ということは、常々スタッフにも伝えています。年間400万円もの採用費をかけている事実を共有し、貴重な新人を全員で快く受け入れ、サポートし、育てていくことが会社の成長に不可欠だと話しています」

「一人ひとりに向き合い、長く働ける環境を整えることが、結果的に会社の成長につながる」と語る松永氏

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コミュニケーションの活性化にも力を入れる。月に1度、店舗ごとに全社員が参加するミーティングを開催するほか、店長・副店長会議も別途設けている。松永氏自身もこれらの会議にすべて出席し、現場の状況を細かく把握する。

また、LINEグループを活用し、日報や売上、各店舗での出来事を全社員で共有。これにより、一体感を醸成し、他の店舗の成功事例を自店に取り入れるといった相乗効果も生まれている。

待遇面でも、正社員だけでなくアルバイトやフリーターへの手厚いサポートが光る。貢献度の高いアルバイトには賞与を支給し、フリーターであっても社会保険の加入対象とし、家族手当(配偶者1万円、子1人1万円)も支給。産休・育休からの復帰支援として、日中の仕込み時間だけ働くといった柔軟な働き方も用意されている。

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経て2017年よりフリーライター&編集者として活躍。『食べログマガジン』『Web LEON』『Numero.jp』などで、グルメや旅記事を執筆中。