アサヒビール、システム障害で出荷制限。飲食店への影響広がる
2025年9月29日、アサヒグループホールディングス(以下、アサヒGHD)の国内基幹システムで障害が発生し、同日からグループ各社の商品受注・出荷が全面的に停止した。アサヒGHDは10月3日、この原因をランサムウェア(身代金要求型ウイルス)によるサイバー攻撃だと公表。被害拡大防止のためシステムを遮断し、工場の稼働を一時停止する事態となった。システム遮断後の調査では、情報漏えいの可能性を示す痕跡も確認されたという。
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「スーパードライ」など一部出荷再開も、手作業での対応続く
2025年10月14日時点でアサヒGHDからシステム復旧の時期についての発表はなく、一部業務に影響が残っている模様だ。
傘下のアサヒビールは全6工場での製造を10月2日から再開しており、「スーパードライ」の出荷を一部再開。10月15日からは「アサヒ生ビール」「スタイルフリー」「クリアアサヒ」「ドライゼロ」「ブラックニッカクリア」などの出荷を一部再開する予定だ。システムによる受注・出荷業務が滞っている中、お客への商品供給を最優先とし、部分的に手作業での受注を進め、順次出荷を開始しているという。
また、「ウィルキンソン」などを扱うアサヒ飲料は、10月9日から全7工場で製造を一部再開。アサヒグループ食品は、10月8日時点で全7工場での製造を一部再開している。一方で、アサヒビールおよびアサヒ飲料においては、10月以降に発売予定だった複数の新商品の発売が延期または見合わせとなっている。
キリン、サッポロ、サントリーも影響受け出荷を一部制限
アサヒGHDの供給制限により、他社ビールへの注文が急増。飲食店が代替品としてキリン、サッポロ、サントリー製品に切り替えたため、各社とも安定供給のために出荷制限を実施する事態となっている。
キリンは10月9日出荷分から「一番搾り」などの業務用商品を、サッポロは10月3日出荷分から「サッポロ生ビール黒ラベル」や「ヱビスビール」の出荷調整を開始。サントリーも10月6日時点で、一部商品の制限に踏み切った。これにより大手ビールメーカー4社すべてが供給制限を余儀なくされ、業界全体に波紋が広がっている状況だ。
炭酸水含む割材など、ビール以外の商品にも影響
影響はビールだけにとどまらない。アサヒGHD全体の物流が止まったことで、チューハイ用の割材やソフトドリンク、食品なども入手困難な状況になっている。特に、生ビール提供に欠かせない炭酸ガスボンベの供給が滞ることは、多くの飲食店にとって大きな懸念材料だろう。
実際に、アサヒ飲料が扱う水やお茶、炭酸飲料も出荷停止の対象となり、これらを仕入れられない飲食店も発生。SNSでは「アサヒの出荷停止で、ウィルキンソンの炭酸が入らない」「アサヒのシステム障害の影響でトニックウォーターが入荷されていなかった」という声も上がるなど、影響はサプライチェーン全体に及んでいることがうかがえる。
平時から複数の仕入れ先を確保し、リスクヘッジを
今回の事態は、飲食店にとって仕入れ先を分散する重要性を、改めて浮き彫りにしたと言える。特定メーカーへの依存度が高いと、今回のような不測の事態で、供給が途絶するリスクが高まってしまうためだ。平時から複数の仕入れ先を確保し、リスクヘッジしておくことが今後の店舗運営の鍵となりそうだ。
※参考資料
・アサヒグループホールディングス「サイバー攻撃によるシステム障害発生について(2025.09.29)」
・アサヒグループホールディングス「サイバー攻撃によるシステム障害発生について(第2報)(2025.10.03)」
・アサヒグループホールディングス「サイバー攻撃によるシステム障害発生について(第3報)(2025.10.08)」
・アサヒビール株式会社「アサヒビール全6工場稼働・一部出荷再開および新商品発売延期のお知らせ(2025年10月6日)」
