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経堂のニューアメリカン『NEAR MINT TOKYO』が手にした、唯一無二の“三種の神器”

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「イカ墨のフライドニョッキ」は香り豊かで旨みも強く、酒が進む人気メニュー

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食・音楽・酒、それぞれのトップクラスに身を置いて道を深める

食、音楽、酒のすべてが高いレベルで共存する『NEAR MINT TOKYO』。渡辺氏が今のような店の構想を思い描いたのは、大学時代だった。もともと音楽への関心が強く、当時、アルバイトで稼いだお金で音楽が楽しめるダイニングやバーに通い詰めていた渡辺氏は、「自分も食と音楽が楽しめる店を作りたい」とおぼろげに考えていたという。音楽レーベルへの就職が叶わなかったこともあり、料理を学ぶべく調理師専門学校に入学した。

「入学した頃はまだ食よりも音楽への興味が強かったのですが、専門学校を出てフレンチレストランに勤めるようになってからは、食の比重が大きくなっていました。料理の道一本に絞って突き進んでいる同僚に刺激を受けたんですよね」

その後1年間渡米し、さまざまなジャンルがミックスされた料理を習得。帰国後、『ブルーノート東京』とその系列店で計4年半の勤務を経て、清澄白河のメキシコ料理店に勤めたが、同店のイベントでDJと出会ったことが、その後の進む道を決めるターニングポイントとなった。

「料理に没頭する時間が長くなって、いつの間にか音楽が疎かになっていることに気づいたんです。ちょうどその頃、知人のDJからニューヨークでリスニングバーを立ち上げようとしている人を紹介され、もう一度向こうで働きながら、音楽の世界に浸かってみようと決めました」

現地ではリスニングバー『All Blues』やオイスターバーの立ち上げ、バームクーヘン専門店のレシピ開発など、食の仕事をしながらレコードを掘るように探し、ライブにも通う日々。音響についても知識を深めた。

厨房の端に据えられた音響機器

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ニューヨークで5年過ごし、いよいよ独立を視野に再帰国。しかし、飲食店に欠かせない酒についての知見がまだ弱いと感じた渡辺氏は、開業準備を進めながら、世界的にも評価が高い渋谷のバー『The SG Club』で働き始めたという。

「実は当時『The SG Club』がそんなにすごいバーだとは知らなくて。たまたま写真で見た内装に惹かれて、お酒と一緒にインテリアも学びたいと思って応募したんです。ですから、入店してからは大変でした。カクテルの味や知識を学び、同じカクテルでも作る人によって味が変わることを知れたのは大きな経験でした」

偶然ともいえる出合いだったが、食とともにある酒にスポットライトを当てなければ今、食・音楽・酒の三つを究めた唯一無二の『NEAR MINT TOKYO』は生まれなかっただろう。こうしていわば“三種の神器”を手にし、満を持して物件を探し始めた渡辺氏が拠点に選んだのは、経堂の街。すでにできあがっているエリアではなく、今後の盛り上がりが期待できる街だからだという。

経堂駅から徒歩3分。個人店が並ぶ経堂すずらん通り商店街にある

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難波美枝

ライター: 難波美枝

ライター・エディター。プロ向けのフランス料理専門誌の編集部におよそ10年在籍した後、フリーランスに。料理雑誌やワイン専門誌、Webなどで星つきレストランからビストロ、バルまで、幅広く取材。