三重県が全国初の“罰則付き”カスハラ防止条例を検討。2026年の義務化に飲食店はどう備える?
2025年10月14日、三重県はお客による著しい迷惑行為「カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)」の防止に向け、全国で初めて罰則付き条例の基本方針を県議会委員会に提示した(参考1)。今回は三重県が目指すカスハラ防止条例の概要と、2026年から段階的に義務化されるカスハラ対策について、飲食店が押さえるべきポイントを紹介する。
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三重県が目指す罰則付きカスハラ防止条例の概要
お客による悪質な迷惑行為から労働者を守るためのカスハラ防止条例は、東京都が全国に先駆けて2024年10月に成立させた(参考2)。2025年4月1日からは北海道や群馬県でも施行されている(参考3)(参考4)。
これに対し三重県は、刑法や既存の法令で対応できない特定の行為を「特定カスハラ」として罰則の対象とすることを検討している。主に、大声による謝罪や、面会の執拗な要求、その他嫌悪を抱かせる言動などが該当するという。
三重県が2025年春、県内の事業者を対象に実施した調査によると、過去3年間でカスハラ行為を受けた割合は14.2%に上り、従業員の長期休業や離職といった被害が発生している。従業員のミスに対して説明や謝罪を繰り返し要求する行為など、法令で対処できない事案も含まれていた。
「特定カスハラ」に対する知事からの禁止命令に違反した場合は「50万円以下の罰金、拘留又は科料(かりょう)」とする方向で検討が進められており、2026年度の条例案提出を目指すという。成立すれば全国初の罰則付き条例となる見込みだ。
条例成立に先駆け、三重県桑名市では初の「氏名公表」も
2025年4月1日より三重県桑名市では「桑名市カスタマーハラスメント防止条例」が施行され、自治体初となる加害者の「氏名公表」という制裁措置を盛り込んだ点が注目された(参考5)。
警告に応じない悪質なカスハラ加害者に対しては、市のホームページなどで氏名を公表するとしており、実際にハラスメントを受けた業種、内容などを掲載して加害者に警告を行ったケースが報告されている。
桑名市では条例の施行と合わせて、カスハラ被害者が弁護士への相談や訴訟に際する費用を最大10万円まで補助する制度も開始しており、制裁措置と合わせて被害者支援にも力を入れているようだ。自治体単位での有効な対策は、県の罰則付き条例の成立を後押しする動きとなるかもしれない。
2026年よりカスハラ対策義務化へ。飲食店が取るべき行動とは
2025年6月に改正された労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメントの防止措置は2026年より段階的に事業主の義務となる予定だ。厚生労働省はカスハラ対策企業マニュアルを作成し、カスハラ対策の基本的な枠組みを以下のように紹介している(参考6)。
まず、カスハラを想定した事前の準備として「企業等の基本方針・姿勢の明確化」「従業員への社内対応ルールの教育・研修」などの必要性を説く。次に、実際にカスハラが起きた際の対応として「事実関係の正確な確認と対応」「再発防止の取組」「相談した従業員のプライバシー保護」が重要だとしている。
一方で、お客からの商品・サービスの問題点や欠陥の指摘に対し、従業員の対応のまずさがきっかけでカスハラに至るケースもある。厚生労働省の「業種別カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」作成にあたっての実態把握調査によると、カスハラに発展した原因の上位は「顧客対応・サービス等の遅延」(71.2%)、「対応者の説明・コミュニケーションの不足」(63.6%)だった。サービス提供側の不備がきっかけとなっているケースも多いとうかがえる(参考7)。
カスハラを予防するためには、研修などを通じたお客対応力強化、苦情・クレームがあった場合の対応マニュアルの整備など、組織としての誠実な対応が効果的であると考えられる。
厚生労働省では独自の調査に基づいてマニュアルを作成しているほか、各業界が自ら対策マニュアルを作成する上で役立つ「業種別カスタマーハラスメント対策マニュアルの策定手順例」も提供している。自店をカスハラから守る対策の一環として参考にしてはいかがだろうか。











