飲食店ドットコムのサービス

なぜ『焼鳥やおや』には優秀な人材が集まるのか? 店の“世界観”が最強の求人コンテンツに

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

大切なのはスキルより「相性」。同じ音楽を聴く仲間のような空気感

同社が求める「カルチャーフィット」とは、具体的にどのようなものなのだろうか。遊津氏は、それを「明文化するのは難しい」としながらも、いくつかのキーワードを挙げる。

「根本にあるのは、『お客さまを楽しませたい』という思いです。だから、人と話すのが好きで、やらされ仕事ではなく、自分から仕事を楽しめる人でないと厳しいかもしれません。基本的にオープンキッチンの店舗なので、料理人も接客が楽しめる人が向いていますね」

そのため、採用選考で重視するのは「相性」だという。スキルや経験は問わない。実際に、未経験で正社員として入社し、3年ほどで店長を任されるまでに成長したスタッフもいる。

「面談での空気感や、応募動機の質を何より大切にしています。極端な話、顔を見た瞬間に『この子はうちで楽しく働けそうだな』って、だいたい分かるんです。そのためにも、まずはお店に来て、僕らの空気感を肌で感じてほしい。店に来たことがない子は、これまでの経験上、長くは続かなかったので、採用は難しいと考えています」

この「空気感」を、遊津氏は音楽のジャンルに例えて説明する。

「例えば僕らのメンバーは、ヒップホップやR&Bが好きな人が多い。もちろん、それしか聴かないわけじゃないけど、カルチャーの根っことして共通している。そこに、例えばパンク一筋の人が来たら、良い悪いではなく、単純に話が合わないかもしれない。採用における相性も、それに近い感覚です」

店側が自分たちのカルチャーを明確に表現し、それに共感した人が集まる。その自然な流れこそが、ミスマッチを防ぐ最良の方法だと考えているのだ。このミスマッチを防ぐため、「今後はよりリファラル採用に力を入れていく」と遊津氏は明かす。

現在YAOYAは6店舗を展開。社員は約20名、アルバイトは約30名が在籍

画像を見る

最高の採用コンテンツは「店づくり」そのもの。報酬は金銭ではなく「経験」で返す

「ここで働きたい」と思わせる魅力的な店をつくることこそが、最強の採用戦略だ。その考えを体現しているのが、約24坪で月商約1,200万円を売り上げる渋谷円山町の『YAOYA Ba』だ。

「最近、『YAOYA Ba』に来てくれた人で、『ここで働きたい』と思って応募してくれるケースが増えました。かっこいい店で、スタッフが生き生きと働いていれば、自然と『仲間になりたい』と思ってくれる人が現れる。だから、まずはちゃんとした店を作り込み、良いサービスを提供し続けることが、求人にも繋がると信じています」

そのためには、安売りをせず、価値に見合った価格でサービスを提供することも重要だという。その言葉を裏付けるように、同社の給与・待遇は業界内でも高水準だ。

社員は、未経験でも月給33万円からのスタート。店長・マネージャー候補は月給40~60万円がベースとなり、社員の平均年収は500万円を超える。中には年収650万円の店長もいるという。休日もしっかり確保されており、年間休日は110日。月8~10日の休みに加え、夏季・年末年始休暇も取得できる。もちろん、賞与は年2回支給され、売上や利益に応じたインセンティブ制度も整備。スタッフの頑張りに応える体制が整っている。

スタッフの貢献に報いる仕組みもユニークだ。特にリファラル採用においては、紹介してくれたスタッフに対して金銭的なインセンティブは設けていない。

「お金がもらえるから知り合いを紹介するのって、少し違う気がしていて。僕らにとって本当にありがたいことなので、その感謝は別の形で返したい。それが、海外視察への帯同だったり、契約している生産者さんのもとを訪れたり、器の買い付けに同行してもらったりすることなんです。お金では買えない経験を積んでもらうことが、一番の還元になると考えています」

Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経て2017年よりフリーライター&編集者として活躍。『食べログマガジン』『Web LEON』『Numero.jp』などで、グルメや旅記事を執筆中。