坪月商60万円を売る『ユメキュウ学芸大学』。20代店主が描く、深夜に飲食業界人が集う店とは?
『ユメキュウ学芸大学(以下、ユメキュウ)』の閉店時間は午前3時。深夜帯にフォーカスを当てた特殊な営業スタイルで、多くの飲食業界人が集まることで知られる酒場である。2025年5月には開業2周年を前に内装を含めたリニューアルを敢行。その効果で大幅に売上を伸ばし、現在の平均月商は600万円、坪月商60万円を誇る。
しかも、同店を切り盛りするのは27歳の宮内竜輔氏だ。若き経営者が店づくりのために何を考え、どう行動しているのかを取材した。
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20代オーナーの店に通うのは人気繁盛店の凄腕経営者たち
営業前の夕方に行った取材の終盤に、ちょっとしたハプニングが起きた。突如、泥酔気味の3名が入店してきたのだ。宮内氏は「すみません。『(立呑み)鉄砲玉』(学芸大学)や『立呑み中華 起率礼(きりつれい)』(自由が丘)などのオーナーの正木(勇貴)さんたちです。ハシゴして来たようですね」と紹介してくれて、彼らをカウンター席へ案内した。記者が「今日は飲食店ドットコムの取材です」と告げると、正木氏は「それはうれしいね。普段使いできるのが『ユメキュウ』のいいところです!」と上機嫌で席に着き、お酒のオーダーを始めた。
「同業者に愛される店」の一端をリアルに垣間見ることができた。通常なら飲食業界人が集まり出すのは深夜1時以降。学芸大学だけでなく、三軒茶屋、渋谷、中目黒などに店を構えるオーナー、従業員らが夜な夜な訪れ、にぎわうそうだ。
「この辺に住んでいる方が多いようです。一番仲がいいのは正木さん(笑)。毎日のように来てくれますね。同じ学大界隈では『焼鳥やおや(HANARE)』(のオーナー)さん、三軒茶屋からは『三茶呑場 マルコ』(のマネージャー)さんなどが来てくれます」
そうそうたる顔ぶれが深夜に集まるのだから驚きだ。
店を開け続ける体力勝負の戦略で同業者の拠り所に
宮内氏は、大学在学中に飲食企業のリバースコーポレーションの門を叩き、肉バルのアルバイトから店長へ。2020年の大学3年生のときには業務委託の形で、同社の新店、新宿『ユメノキュウサク』の運営を託される。コロナ禍で奮闘し、軌道に乗った後は会社から店舗展開の話が出て、その際に自ら独立することを決断した。そして学芸大学の好物件に巡り合い、同店の学芸大学店として2023年6月に開業したのだ。
「新宿は人の母数が圧倒的に多いため、予約で席が埋まり、深夜営業をする必要がありませんでした。良い店が多くジャッジの厳しいベッドタウンの学大に来て、商売が甘くないことを知りました。自分は20歳からこの世界にいますが、料理人として働いていたわけではありません。下積みもなく24歳で独立して、俺にできることは何かと考えたときに体力勝負しかなかったんです。学大で勝ち抜くための術ですね」
それで営業を深夜帯まで延ばし、学大界隈の一部の飲食業界人に刺さった。そこから「学大に深夜まで頑張っている若いヤツの店がある」との情報が口コミで拡散したという。
「同業者の方は経営者同士でつながっていて、紹介の紹介で、徐々に来てくださる方が増えていき、コミュニティの輪になりました。すごい先輩ばかりですから、勉強になる話が聞けるし、アドバイスもしてくれます。この環境を絶対に離さないようにするために、実は……めちゃくちゃ長く店を開けることにしたんですよ。最初の1年はラストオーダーをほぼ取りませんでした」と、宮内氏は自嘲気味に笑う。



