飲食店ドットコムのサービス

【2026年4月から努力義務化】飲食店経営者が準備すべき「高年齢労働者への労災防止対策」とは?

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

画像素材:PIXTA

画像を見る

人手不足が深刻化する飲食業界にとって、シニア人材は欠かせない存在だ。一方で、60歳以上の高年齢労働者が労働災害による死傷者数に占める割合は、増える傾向にある。こうした中、高年齢労働者に対する労働災害防止を努力義務とする「改正労働安全衛生法」(以下、改正法)が2026年4月1日から施行される。本稿では、高年齢労働者への労災防止措置の指針案と、飲食店で取り組みたい具体的な対策(出典1)について解説していく。

>>飲食店“専門”の求人サイトだから即戦力が見つかる。社員とアルバイトまとめて19,800円で掲載可!

努力義務化を解説。「高年齢労働者」の労災リスクと改正労安法の指針案

高年齢労働者への労災防止措置がすべての事業者に対して努力義務となる改正法の施行が、2026年4月1日に迫っている。高年齢労働者は「墜落・転落」と「転倒による骨折等」の労働災害発生率が高まる傾向があり、重症化や長期休業にもつながりやすい点に注意したい。

これをふまえて改正法では、「高年齢者の労働災害の防止を図るため、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない」と定めている。さらに、その実施に必要な指針案もすでに公表されている。

この指針案は2020年に公表された「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)を踏襲している。飲食店を含む事業者は、次の5点を考慮して職場環境を整備することが求められる。

1. 安全衛生管理体制の確立
企業の経営トップが高齢者労働災害防止対策に取り組む方針を表明し、体制を整えること。労働災害防止のためのリスクアセスメントも実施する。

2. 職場環境の改善
身体機能の低下を補う設備・装置を導入するほか、高年齢労働者の特性を考慮して作業を見直す。

3. 高年齢労働者の健康や体力の状況把握
定期の健康診断を確実に実施するなどして健康状態を把握し、高年齢労働者を対象とした体力チェックを継続的に実施する。

4. 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応
個々の健康や体力の状況を踏まえ、労働時間の短縮や深夜業の回数の減少、作業の転換といった措置を講じる。

5. 安全衛生教育
高年齢労働者、管理監督者などに対し、高年齢労働者に特有の特徴と対策についての教育を行うよう努める。

いますぐ取り組める! 飲食店で実践すべき「高齢者労災防止」の具体策

飲食店は、水や油による床の滑り、火傷、切創、重量物の運搬など、労働災害のリスクが高い職場の一つだ(出典2)。高年齢労働者の転倒はもちろん、20歳未満の労働者の火傷も増えており、早急な労働災害防止対策が求められている。

例えば、転倒対策として滑りにくい安全靴や厨房靴を支給する、階段や段差がある場所には手すりを設置するといった対策が有効だ。また、フライヤー使用時には長靴、長エプロン、耐熱手袋などの着用を促すといった安全教育の実施も欠かせない。

さらに、切創防止のためには、包丁を使用後すぐに所定の位置に戻す、スライサーなどの機器は必ず電源を切って清掃するといったルール作りも大切になる。高年齢労働者の特性や、飲食店で多い労働災害の事例をふまえ、職場環境を今一度見直してみると良いだろう。

少子高齢化が進み、人手不足が深刻な状況にある現在、高年齢労働者に対する労災防止対策は、店舗運営を持続可能なものにするためにも欠かせない要素だ。改正法の施行を待つのではなく、今のうちに職場にどのようなリスクがあるのかを把握し、職場環境を見直してみてはいかがだろうか。

この記事は役に立ちましたか?
はい いいえ
Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com