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【2025年外食トレンドまとめ】繁盛店の共通点は「異分野ミックス」。2026年の飲食業界も先読み

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画像素材:PIXTA

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人手不足や物価高騰が常態化し、経営環境の厳しさが増した2025年の飲食業界。帝国データバンクの調査によれば、国内の企業倒産全体は12年ぶりに年間1万件を超える見通しだ。飲食店においても過去最多ペースの倒産が続いており、まさに店舗の選別が加速した1年だったと言えるだろう。しかし、そのような逆風下でも驚異的な売上を記録し、お客を熱狂させた店舗は確実に存在している。

本記事では、2025年に公開された取材記事やデータをもとに、繁盛店に共通する成功要因を分析。激動の1年を総括するとともに、来る2026年の業界動向を予測していく。

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ソムリエの渡邉與義さん(写真左)と点心師でシェフの西原みのりさん(写真右)が2人で切り盛りする『yum』

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異分野融合型の「ネオ専門料理店」が台頭

2025年、最も顕著だったトレンドの一つが、既存のカテゴリーにとらわれない「異分野の掛け合わせ」だ。単なる専門化を超え、一見すると意外性のある要素を組み合わせることで独自のニッチを築き、強力な集客フックを生み出している。

■点心×ナチュラルワイン
幡ヶ谷の『yum』は、名店で研鑽を積んだ点心師とソムリエがタッグを組み、オープン4か月で連日満席を達成。トリュフやポルチーニなどの洋風食材を取り入れた自由な発想の点心を、素材の旨みや酸に寄り添うナチュラルワインと合わせるスタイルで人気を博している。

■アイスクリーム×ワイン
アイスクリームを「スイーツ」ではなく「料理の延長」と捉えることで、大行列を生む唯一無二の業態を確立した幡ヶ谷の『kasiki』。ハーブやスパイスを駆使した独創的なフレーバーと、ナチュラルワインのペアリングに注目が集まった。

■中華×ジビエ
三軒茶屋の『ニューあかんぼ』は「中華×ジビエ」という異色業態で、月商700万円で好発進した。高タンパク・低脂質な「筋肉飯」としてのジビエに着目し、クマ肉の黒酢餡やイノシシのシュウマイなど、獣臭を抑えた丁寧な調理法で若い女性層の新規獲得に成功している。

代々木上原駅前にオープンした『IGOR COSY』。ディレクションを務めた丸山氏(中央)とスタッフの皆さん

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■焼酎×創作料理
渋谷『げんてん』などを展開するブラボー・ピープルズと、シェルシュ代表の丸山智博氏による『IGOR COSY』。焼酎をシェイクしてワイングラスで提供する他、特定の銘柄を「前割り」にするなど、従来のイメージを裏切るアプローチでファンを拡大した。同じく丸山氏が手掛ける日本橋兜町『MARUYAMA』では、酒造の革新的なこだわりにも目を向け、自由な食の組み合わせを提供している。

■鳥焼肉×自然派ワイン
「鳥焼肉×自然派ワイン」を組み合わせた祐天寺の『Cotori』。「揚げ物を一切出さない」というルールで鳥焼肉の専門性を守りながら、南アフリカのワイナリーで厳選したワインとのペアリングにも力を入れる。

■洋食×ワイン
水道橋の『陽食』は、老舗の味をベースにしつつ、ナチュラルワインを中心としたアルコール売上比率を40%まで高めることで、坪月商40万円を達成。池尻大橋の『洋食api』は元学校の跡地という立地を活かし、昼は「給食」を連想させる洋食店、夜は本格イタリアン&スパニッシュを楽しめるワイン酒場という二面性を武器とする。両店とも、レトロ業態を鮮やかに令和版へアップデートした好事例といえそうだ。

これらは「そこでしか体験できない」価値を創出し、立地に関わらずお客を呼ぶ目的来店を強力に促している点が共通している。

9坪ながらレイアウトが工夫されている『立呑みアーニー』

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高効率・高収益型の「立ち飲み」と「狭小店」が増加

コスト増が避けられない中、人件費や家賃を抑えつつ高い坪月商を実現する「高効率モデル」が躍進した。

特に注目すべきは、立地のハンデをコンセプトで覆した事例だ。渋谷の『立食 型破離(かたやぶり)』は、「立ち飲み×空中階」という、従来のセオリーでは不利とされる条件を逆手に取り、坪月商100万円超という驚異的な数字を達成。空中階ならではの隠れ家感と立ち飲みの気軽さを融合させ、新たな需要を掘り起こした。

池袋の『立呑みアーニー』も同様に、独自の立ち飲みスタイルで坪月商70万円超えを記録している。

「狭小店」の極致ともいえるのが、池袋の『岩瀬蒸店(いわせむしてん)』だ。3.5坪の広さで月商435万円、坪月商は125万円に達する。回転率の高さと、低単価商品をフックにした追加注文の誘導が巧みに機能している証といえるだろう。

また、角打ちスタイルの進化形として、神田の『キャリカーズトーキョー』がある。「お客であふれかえる“酒屋”」として同店が作り出すポップでディープな空間の正体は、元クラフトビール専門誌編集長である店主の確かな目利きにあるようだ。単なる小売店ではなく、酒好きがコアな情報を共有し合う「基地」のようなコミュニティを形成することで、高い集客力と収益性を確保することに成功している。

『キャリカーズトーキョー』店主・白石達磨氏

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アイドルタイム活用の業態&ワンオペ店の躍進

単一の業態や営業時間だけに頼らず、収益源を多角化して経営基盤を安定させる動きも目立った。
代表的なのが、昼と夜で異なる顔を持つ「二毛作」だ。新宿の『食堂わた』は、昼は定食店、夜は本格的な和食居酒屋として営業し、両時間帯で収益を上げている。小伝馬町の『timsum』は「中華バル×街のワインセラー」という二毛作スタイルで集客力を高めた。

「中華バル×街のワインセラー」で人気の小伝馬町『timsum』

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アイドルタイムの活用も進んでいる。渋谷の『ビストロ ロジウラ』は、朝から行列を生むモーニング営業を仕掛け、ディナータイム以外の収益源を確保。同じく渋谷の『CHERRY PICK HILLS』は、ファミレスとカフェの普遍性に着目した昼業態を展開し、幅広い客層を取り込んでいる。これらの事例は、店舗という資産を最大限に稼働させることが、利益確保の近道であることを示した。

外苑前のイタリアン『gnudi(ニューディー)』や参宮橋『SAM』などワンオペレーションによる高効率経営も、昨年に引き続き大きな特徴の一つとなっている。

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『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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