『渋谷 半地下酒場』、“部活ノリ”を脱却し年商5億円に。急成長を支えた「組織改革」の全貌
東京・渋谷の道玄坂。その名の通りビルの半地下にありながら、連日若者たちであふれかえるのが今添笑店による『渋谷 半地下酒場』だ。2016年10月に創業した南青山の『讃岐うどん 愛』を皮切りに、『鉄板焼き 半駄ヶ谷』『ブルー・ザ・スリー』『酒処 ニュー萬斎』など、現在渋谷・青山エリアを中心に7店舗8業態を展開している。
独創的な業態開発と、クリエイティブな空気感で人を惹きつける同社だが、その裏側には急拡大ゆえの組織の歪みと、それを乗り越えるための思い切った改革があった。代表の今井洋氏に、組織化への道のり、そして優秀な人材を惹きつける採用・育成術について聞いた。
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飲み仲間と始めた飲食店。直面した「属人化」の限界
アパレル業界出身の今井氏が飲食業に足を踏み入れたのは2016年。当初の採用手法は、実にユニークな一方、経営的な危うさをはらんでいた。
「最初は飲み仲間や知り合いに声をかけて、働いてもらっていたんです。アーティストやフォトグラファーなど、アパレル界隈の若い子たちが『手伝いたい』と言ってくれて。彼らは感度が高く、お店の空気を作るのは上手だったのですが、会社として給与体系も評価制度もどんぶり勘定。まさに『たまり場』のような状態で、組織と呼べるものではありませんでした」
転機が訪れたのは、2店舗目となる『鉄板焼き 半駄ヶ谷』の立ち上げ時だ。「Googleマップでエリア検索し、競合がいない業態を当て込む」という独自のマーケティングで勝算を見込んだ業態ではあったが、深刻な人手不足に陥った。
「鉄板焼きの経験者が誰もおらず、オペレーションは崩壊寸前。焦った私は、スタッフに対して鬼軍曹のように厳しく当たってしまいました。夜中の3時にLINEで業務連絡をしたり、理詰めでお店を管理しようとしたり。結果、店長は音信不通になり、売上も低迷。このままでは全員辞めてしまうという危機感がありました」
当時の失敗を、今井氏は「地に足がついていなかった」と振り返る。感覚やノリだけでは、店舗数が増えるにつれて限界が来る。そこで今井氏は、料理のクオリティ担保とオペレーションの改善に着手し始める。月1回の料理ミーティングで試食会を行い、味の基準を統一することから始めた。これが、組織としての階段を上る最初の一歩だった。
敏腕シェフの採用が「働き方改革」のきっかけに
同社の組織改革が本格化したのは、中華業態『ブルー・ザ・スリー』の出店が決まった2023年3月頃だ。物件は契約したものの、またしても人がいない。9か月間も家賃だけを払い続ける空家状態が続いた末に出会ったのが、現在各店舗の料理監修を行う冨田新吾氏だった。
「冨田は、中国料理の名店『銀座アスター』の銀座本店で13年間経験を積み、自身でも10年間、飲食店を経営してきた凄腕です。絶対に彼に来てほしいと口説いたのですが、彼にはお子さんがいました。『子どもとの時間も作りつつ働ける環境を望んでいる』と言われたんです。当時の弊社は就業規則もなく、休みも不定期。でも、彼のような優秀な人材、そして今後も家族を持つスタッフが働き続けられる会社にするためには、会社が変わるしかないと決意しました」
そこから今井氏は、矢継ぎ早に制度を整えた。住宅手当(2.5万円)に加え、子供手当(1人につき1.5万円)を新設。さらに引越し費用の貸付制度も導入した。休日に関しても、『酒処 ニュー萬斎』や『Sanchar BIRD』では定休日を設け、子供がいるスタッフも無理なく働ける環境を構築した。
「冨田の入社が、会社を『ちゃんとする』きっかけになりました。今では日曜定休の店舗を作るなど、ライフステージに合わせた働き方ができるようになっています」






