坪月商45万円を売る三軒茶屋『ユキツバキ』。原価率70%の看板メニューが集客の鍵に!
熟練スタッフはグリル、アルバイトはわっぱ飯で分業
他のグリルでは、和牛とは別の業者から仕入れる「新潟産 妻有(つまり)豚のグリル」(1,680円)も用意。調理時間はいずれも20~30分程度を要する。グリラーで火加減を気にしながらじっくり焼くため、調理技術も必要となり提供速度を上げられない。ここにわっぱ飯の注文も重なったら大変そうだが……。「わっぱ飯はアルバイトでも作れます。これがもし調理テクニックのいる土鍋だったら、分業できずに店を回すのが厳しかったと思います」と、飯塚氏は語る。
また、開店初期はコース料理のメインを和牛のグリルが張っていたが、注文人数が多いとやはりオペレーションに支障が出た。そこで、新たに開発した「にいがた和牛のすきやき風」(単品2,500円)が救世主に。和牛のスライスを皿に並べてバーナーで炙るだけなので調理は1分で済む。味も申し分なく、グリルに替わりコースのレギュラー入りを果たした。
他にも、3度揚げで仕上げる「新潟産 妻有豚のヒレカツ」(1,580円)もあり、肉料理全体の注文率は約6割、そのうちグリルが6割に達する。
看板メニューがハイコスパ商品でも経営は成立する
飯塚氏に看板メニュー開発の極意を聞いてみると、こう答えた。
「値付けには悩み、コスパを感じてもらえるギリギリの金額に設定しました。和牛のグリルをはじめ、『いくらと鮭 黒舞茸のわっぱ飯』や『にいがた和牛と卵黄 黒舞茸のわっぱ飯』の原価率は約70%です。看板メニューに関しては採算度外視でも、私はいいと思っています。ポーションを減らすか、単価を上げればよいのかもしれませんが……。一切の妥協をせずに、そのままの量と価格で出し続けたら、開店3か月後くらいから人気が上昇し続けました。今ではわっぱ飯とグリルを目指して訪れる予約客が来客数全体の8割に。うちにとって看板メニューは、集客のフックになるサービス商品です」
もちろん、担保として人気のAランク商品群に利益率の高い酒肴やドリンクを置き、メニュー全体を構成するのが居酒屋経営の常套手段だろう。『ユキツバキ』の場合、料理なら原価率20%を切る「山芋の竜田揚げ」(700円)や鶏レバーの「とろレバカルパッチョ」(780円)などがそれに該当。ドリンクでは新潟ブランド茶葉の「『冨士美薗』ほうじ茶割り」(600円)など、粗利が大きい茶割がよく出る。オール新潟の日本酒は定番銘柄をあえて置かず、他店と差別化を図りつつ、原価率30%以下になるように設定。それら全体で帳尻を合わせ、トータル原価率を35%で落ち着かせている。
さらに、飯塚氏は賃料にも言及。「三軒茶屋なので賃料は月41万8,000円と安くありません。とはいえ、路地裏の地下店舗だからまだその額で収まり、家賃比率は10%を切っています。適正な賃料であれば、看板メニューに原価をかけても間違いなく成立すると思います」と、固定費を含めた費用コントロールの重要性を説く。
採算度外視の看板メニューの設計に対し、飯塚氏は「(他の経営者の)参考にあまりならないと思いますよ」と謙遜して笑う。とはいえ、自らを「石橋を叩いて渡るタイプ」だと言う店主が打って出たアクティブな施策が、激戦区・三軒茶屋の客の心を確実に掴んだ。「郷土の魅力を伝えたい」というブレない思いと、緻密な計算に裏打ちされた店づくりからの学びは、決して少なくない。
『三茶 ユキツバキ』
住所/東京都世田谷区三軒茶屋1-36-1 第一サカイビルB1
電話番号/03-6450-9844
営業時間/17:00~23:30(フードL.O.22:30、ドリンクL.O.23:00)
定休日/日曜、祝日
坪・席数/13.7坪・35席(カウンター10席、テーブル25席)
https://www.instagram.com/sancha_yukitsubaki/








