シェアリングコーヒー店『蜃気楼珈琲』と考える、“廃業しない”店づくりに必要なスキルとマインド
飲食店経営はリピーター戦略の繰り返し。小さな失敗を経験し課題解決力を鍛える場
この日、店を訪れるお客と楽しそうに会話を弾ませていたりんたろうさんだが、その優しく温かい眼差しは、目の前の現実と向き合っていた。
「飲食店経営で一番恐ろしいのは、多額の開業資金を費やしたあとに、飲食以外のスキルの必要性と、そのスキル不足を目の当たりにすることです。例えば、集客、原価や利益率・人件費の計算、接客、お客さまのニーズとのミスマッチ……。店を始めてからではお金は戻ってきませんからね(笑)。だからその前に、できるだけたくさん“小さな失敗”をしてほしいんです。自分に足りない知識や視点を見つけて、それを乗り越える策を主体的に考える。どんなにコーヒーの技術に長けていても、多くの人にはそうしたスキルや経験が圧倒的に足りないと感じています」
『蜃気楼珈琲』があえて、富士見ヶ丘というローカルなエリアに店を構えたのもその一貫だ。放っておいても人が来る駅前や繁華街では、自分の本当の実力や経営能力が可視化できない。りんたろうさんは、「何もしなければ誰も来ないけど、ちゃんとすれば人が来る場所を選んだ」と話す。
さらに、シェアスペースだからこそ出店者たちはより「自分の武器」が鍛えられるともいえるだろう。コーヒー業界がレッドオーシャンと化した今、単においしいコーヒーを提供するだけでは、顧客獲得にも利益にも繋がらないのが現実。お客が自店を選んでくれる「+αの理由」が必要になるわけだが、空間や内装デザインで大きく独自性を打ち出せないシェアスペースでは、他の要素でお客の心を掴まなければならないからだ。
「人気店で働いていると見えにくいけど、自分一人になった時、お客さんが一人来てくれることが奇跡に近いことに気づきます。その人がまた戻って来てくれるとなるともう天文学的確率です(笑)。すごくドライないい方になりますが、飲食店経営は『いかにもう一度来てもらうか』が最大で永遠の課題。幸せを届けたいという背景は大前提のうえで、また来てもらわなければビジネスとして成り立ちません。そのためにおいしいコーヒーがあり、自分の店を選んでもらう武器が必要になる。ここはそれを試す場……、もしくは持っていないことに気付き、見つけて磨いていく場所だと考えています」





