シェアリングコーヒー店『蜃気楼珈琲』と考える、“廃業しない”店づくりに必要なスキルとマインド
集客に必要なのは、2つの「期待値デザイン」。“引き算”に重きをおくべき
言い換えると、それはあらゆる「集客力」を養うということに等しいだろう。集客こそ、すべての出店者がぶち当たる大きな壁であり、飲食経営のカギだとりんたろうさんは考える。もう少し解像度を高めていくと、2つの「期待値」の設計の重要性が見えてきた。
一つは、まだ未体験のお客に「行ってみたい」と思わせる初期集客時の期待値。店の存在を周知する努力はもちろん、例えばSNSの投稿一つをとっても、来店したいと思わせる発信になっているか、来てほしいターゲットに自分の店の強みが伝わる内容になっているか。「来店」をゴールとし、誰が・どんな風にその投稿を見て・どう感じて来店するかのロジックを、逆算してアウトプットすることが大切だとりんたろうさんは話す。事実、同じ場所・同じ曜日でも、出店者の発信の仕方次第で大きな差が出るのだそう。
一方、リピーター集客においては「ストレス除去」に期待値コントロールのポイントを据える。
「残念ながら、『おいしい』はお客さんにとっては『普通(当たり前)』であって、再来店の要因にはなりません。よほど感動的においしいか、もしくはほかの何かで『心が動く』瞬間が必要です。これは持論かつ仮説なのですが、僕はやっぱり最大の要素は『人』だと思っています。といっても、愛想を良くしろとか話がおもしろくなきゃいけないということではなく、いかに『お客さんのストレスを除去できるか』ということ」
にこやかな表情ながらも芯のある声色で、りんたろうさんは続ける。
「たぶんすごく些細なことです。入店した時に目が合わない、オーダーの場所がわからない、混んでるけど入っていいの? このコーヒーやお菓子の何がおすすめなの?……。そんな、お客さんが抱えるであろう疑問やストレスを細かく取り除くだけで、同じコーヒーやお菓子でもとびきりおいしく感じたり、店主の熱量が伝わったりするんですよね。たまに『りんたろうさんはコミュ力が高いから、人が集まるんだよ』っていわれるけど、そうじゃない。それは“足し算”の加点の部分であって、まず大事なのは、いかにネガティブ要素を減らせるかの“引き算”。前者は得手不得手があるかもしれませんが、後者は客観視や経験によって誰でも習得できる『技術』です」
うまくいかない時に他責にせず、自分で課題を見つける能力やそれを解決しようとするポジティブなマインドも、飲食店経営には不可欠だと語ってくれた。
コーヒーは世界とコミュニケーションがとれる「言語」。世界中に蜃気楼珈琲を
最後に、りんたろうさんが描く『蜃気楼珈琲』のビジョンについて尋ねると、その視線の先には、今の厳しい現実を超えて広がる新しい未来があった。日本に留まらず、世界各国に『蜃気楼珈琲』の拠点を置き、世界中のバリスタたちがそれぞれの国を行き来しながら現地でファンをつくり活躍する世界だ。
「コーヒーは、もはや飲料を超えた世界共通の『言語』です。日本でどう生き残るかを考え続けても消耗戦になるだけ。バリスタたちが、コーヒー豆一つを持って世界中を飛び回り、どこでも価値を生み出せる世界をつくりたい」
りんたろうさん自身もまた、『蜃気楼珈琲』として現実と課題に向き合い、その解決策を探りながら前に進もうとしている。彼自身や多くのバリスタたちがここで得た小さな失敗の数々は、いずれ世界を動かす大きな力へと変わっていくのかもしれない。
『蜃気楼珈琲』
住所/東京都杉並区久我山5-24-35 ムラマツビル1F
営業時間/昼の部8:00〜17:00、夜の部17:00〜22:00
定休日/不定休
坪数・席数/11.6坪・17席
https://www.instagram.com/shinkirou_coffee










