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坪月商40万円の外苑前『モツ酒場 kogane』。ソムリエ本気の“熱燗居酒屋”【連載:居酒屋の輪】

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木を基調とした温かな雰囲気ながら洗練された内装。荷物置きを兼ねた椅子など、居心地の良さを追求した設計だ

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“お燗の魔術師”への弟子入り。ソムリエの知識が引き出した「熱燗」の真髄

『モツ酒場 kogane』を唯一無二の存在にしているのが、常時20〜30種ラインアップされた季節の純米酒を、最適な温度帯で提案する「熱燗」の提供スタイルだ。しかし、当初の渡部氏は日本酒に関して素人同然だったという。

「やるからには本物を」と考えた彼が取った行動は、池尻の伝説的な名店『えんじゃく、』を営み、“お燗の魔術師”と呼ばれた故・高木晋吾氏に師事することだった。高木氏は『+ruli-ro』の常連客だった縁から、半年間にわたってコンサルタントとして現場に入り、ゼロからお燗の技術を叩き込んでくれた。

「日本酒のお燗は本当に深い。温めて出すお酒は世界でも稀ですが、5度違いで『飛び切り燗』や『上燗』など呼び名が変わり、それに合わせて味がどんどん変化していく。ソムリエとしてワインをデキャンタージュし、味を変える技術を磨いてきた経験が、ここで繋がりました」

異業種の知識と経験が、まったく予期しない形でシナジーを生んだ。同店では「燗冷まし」という技法も駆使する。一旦60度ほどまで温度を上げて米の旨みを引き出した後、徳利に移してゆっくりと温度を落とし、最終的に53度程度で提供するのだ。

「温度が変わるとお米の甘みや旨みの出方が変わります。その変化をエンターテインメントとして楽しんでほしいんです」

大衆居酒屋の「とりあえず熱燗」とは一線を画す、緻密な計算とホスピタリティ。ここに通い続けるファンが絶えない理由がある。

「牛ハツのタタキとパクチーのヤム風サラダ」(990円)。新鮮な牛ハツとナンプラーの利いたドレッシングが、味の濃い日本酒を引き立てる

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コロナ禍の「売上ほぼゼロ」から常連8割へ。暗黒期に磨いた“地域への根”

華々しい船出となるはずだった2019年のオープン直後、世界をコロナ禍が襲った。東京オリンピックによるインバウンド需要も見込んでいた立地だったが、外国人客はゼロに。酒類提供制限がかかり、売上は底を打った。

「一気に誰も来なくなりました。お酒が出せないときはランチをやったり、テイクアウトを試したり、とにかく手を動かし続けていました。正直、何が正解かわからない日が続きましたね」

それでも渡部氏たちが下を向かなかったのは、創業以来大切にしてきた「地域に根ざす」という信念があったからだ。不特定多数の観光客を追うのではなく、近隣で働く人、住む人に徹底的に寄り添う営業を続けた。訪れるお客一人ひとりの顔を覚え、季節ごとにおすすめの一本を変える。そんな地道なコミュニケーションの積み重ねが、コロナ禍の間に確かなファン層を育てた。

「あの時期があったから、今の状況があると思っています。逆境の中で足を運んでくれたお客さまとの関係が深まりました」

現在の来店客の7~8割が常連という数字は、この暗黒期に培われた信頼の証だ。ピンチをチャンスに変えるフットワークも、彼らの強みとなっている。ほかにもコロナ禍では、立地条件の悪化していた創業店『2colori(ドゥエ・コローリ)』をより換気の良い物件へ移転させ、自由が丘『ニショク』として再生。『モツ酒場 kogane』での経験を生かし、よりカジュアルで使いやすい居酒屋業態へとブラッシュアップした。

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。