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坪月商193万円! 自由が丘『起率礼』料理長が明かす「回転・原価・人」の仕組み

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台湾産高級茶葉を使った「8時間水出し茶割り」。中華料理との相性を考えたドリンク設計も店の魅力を支える

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仕事術③ わずか1か月で即戦力化! マニュアル作成と三人体制の空間コントロール

どれほど優れたメニューや原価設計があっても、それを回す人材がいなければ店舗展開も定休日の撤廃も実現しない。『起率礼』が月商490万円から850万円へとジャンプアップできた決定打は、新スタッフが入社してから「わずか1か月」で現場を任せられる体制を構築したことにある。

きっかけは2026年2月、長年中国料理に携わってきた経験者二人の入社だった。それまで1日あたり二人体制だった現場は三人体制へと拡大。オーナーの正木氏から「翌月には週2日ほどあった定休日を撤廃する」と告げられたことで、井上氏は1か月という短期間での戦力化を迫られた。

井上氏がまず取り組んだのが、それまで感覚で行っていた調味料の配合や食材のカットを徹底的に数値化することだった。さらに、仕込み完了後に撮影してInstagramにアップする料理写真を、そのままスタッフ向けの「調理・盛り付けカタログ」として活用。使用する皿、グラム数、盛り付けの立体感を写真で一目瞭然にすることで、口頭指導のロスを劇的に減らした。料理の覚えが早い二人だったため、井上氏はむしろオペレーションの回し方や接客など、二人がこれまで経験のなかった領域の指導に注力したという。

提供時のブレをなくすため、豆腐の切り方からネギの計量、ドリンクの割合、氷の量に至るまで細かく基準が共有される。感覚に頼らない仕組みが、料理長不在でもクオリティを落とさない秘訣だ

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わずか4.4坪という狭小空間ながら「スタッフ三人体制」を敷いているのも同店の大きな特徴。一般的な立ち飲み店からすれば過剰配置にも映るが、この三人体制こそがピーク時のミスを防ぎ、顧客体験と回転率を最大化する要となっている。

同店では、手前(ドリンク・会計・呼び込み)、奥(調理専任)、そして中央(司令塔・洗い物・スピードメニュー補助・客席誘導)という明確な役割分担を策定。特に全体を見渡すことができる中央のスタッフが追加されたことで、混雑時の対応が円滑化し、回転率アップに結びついた。

客席頭上の吊り棚の枠部分に、注文伝票をクリップ&磁石で固定。狭小なカウンター上で手元を塞がず、お客の立ち位置とオーダーを直感的に一致させる工夫だ

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現場からの改善提案も絶えない。伝票の記入ミスや取り違えが起きるたび、スタッフ同士で話し合い、その都度ルールを更新する。最近取り入れたのが、会計時のレジ渋滞を防ぐ「仮打ち」だ。そろそろ会計をしそうなお客には「もう一杯飲まれますか」と一声かけ、「大丈夫」と言われた時点でレジに事前入力しておく。この数十秒の短縮が、次のお客を待たせずに案内する回転スピードへと直結している。ピーク時間帯は外で待つお客もいるため、こちらから積極的に声をかける姿勢を徹底しているという。

「満席になって店内が詰まってきたら、『1回トイレに入ってもらって、こっちに避難してもらえますか』と声をかけてスペースを作ることもあります。不便さを我慢させるのではなく、ポジティブなコミュニケーションに変えてしまう。それも立ち飲みの醍醐味です」(井上氏)

クラシックな中華の職人技を大切にしながらも、現場を属人化させないシステムを導入し、スタッフ全員が同じ熱量でお客を迎え入れる。このチーム力が、驚異的な坪月商を支えているのだ。

「レストラン時代とは違い、お客さまの反応や表情が見えることが何よりのやりがい」と語る井上氏

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名門ホテルの技術を「数字と仕組み」で大衆へ。小さな酒場が証明する料理人の可能性

ザ・リッツ・カールトン大阪の『香桃』、ウェスティンホテル東京の『龍天門』、広尾の『中華香彩 JASMINE』などの厨房で、計8年間にわたり広東料理の技術を学んできた井上氏。4.4坪の立ち飲み店へとフィールドを移した今、その表情には充実感が滲む。

「レストラン時代は厨房の奥深くにおり、自分が作った料理を召し上がるお客さまの顔を直接見ることはありませんでした。今は目の前で口に運ばれ、『おいしい!』と笑顔がこぼれる瞬間をダイレクトに共有できます。料理人としてこれ以上の喜びはありません」

香辛料の香りと奥深いコクが広がる「熟成麻婆豆腐」(890円)。名門ホテルで培った基礎があるからこそ、カジュアルな立ち飲みでも圧倒的な差別化を生み出せる

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立ち飲みというカジュアルな業態でありながら、本格中華の技術を惜しみなく生かし、売上を伸ばしてきた『起率礼』。その強さは、単に「早く料理を出す」「原価を下げる」「人を増やす」といった個別の施策にあるのではない。メニューを設計し、仕込みを変え、人の動きを決め、現場で改善を重ねる。料理人の技術を、店全体が再現できる仕組みへと落とし込んでいることにあるのだ。

『立呑み中華 起率礼』
住所/東京都目黒区自由が丘2-14-2
電話番号/03-4400-0235
営業時間/16:00〜23:00
定休日/不定休
坪数・席数/4.4坪・25席(スタンディング)
https://www.instagram.com/kiriturei_jiyugaoka/

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。