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外苑前『gnudi』ワンオペの裏側。ツーオペに舵を切り坪月商20万円UP【連載:居酒屋の輪】

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『gnudi(ニューディー)』新スタッフの千葉拓哉氏(左)と、オーナーシェフの藤生拓実氏(右)

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人件費の高騰と人材難が続く飲食業界で、あえて「ワンオペ」を選ぶ経営者は多い。固定費を抑え、自分の世界観を妥協なく貫けるスタイルには確かな魅力がある。だが繁盛すればするほど、ワンオペによる負担は増す。売上の天井、心身の消耗、そして機会損失。

東京・外苑前のイタリアン酒場『gnudi(ニューディー)』を率いる藤生拓実氏は、その現実と4年以上も向き合い続けた一人だ。修業先から店を任された時代を含め、孤独に厨房を守り続けてきた彼が2025年秋、ついに決断を下す。辻調理師専門学校フランス校出身の千葉拓哉氏をスタッフに迎え、ツーオペ体制へと舵を切ったのだ。

結果は数字が物語る。月商320万円だった売上は、460万円へと跳ね上がった。坪月商に換算すれば、およそ46万円から66万円という大幅な伸び。6.9坪、わずか15席の空間で、なぜこれほどの飛躍が起きたのか。そこには、恩師から受け継いだ「2択を間違えない」という経営哲学、そして若い仲間への合理的かつ温かな育成手腕があった。

コンパクトながら本場が香る心地の良い店内。連日多くの常連客で賑わう

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グラスが空いているが、手は離せない。4年間のワンオペで見えた限界

外苑前駅から徒歩6分、外苑西通りの裏路地にある一軒。全15席のカウンターとテーブルが並ぶイタリアン酒場『gnudi』には、夜ごとワイングラスを傾ける大人が集まる。連日満席、食べログをはじめとするグルメサイトでも高評価を維持し、「知る人ぞ知る」から「予約の取りにくい店」へと、着実にその評判を広げてきた。

オーナーシェフの藤生拓実氏は1991年生まれ。異業種から飲食の世界に飛び込み、立川のワインバルなどを経て、気鋭のトラットリア『2colori(ドゥエ・コローリ)』で本格的な修業を積んだ。ドリンクやサービスを前回登場のオーナーソムリエ渡部武志氏から、料理を共同代表の山口高志氏からそれぞれ学び、明確な役割分担のなかで飲食店の本質を叩き込まれた。

2020年には前身店舗『+ebi-ro(エビイロ)』の店長に抜擢され、その後独立。気づけば4年以上、基本的に一人で厨房を回し続けていた

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「料理人って意外と寡黙な人が多くて、食材やお皿と向き合う延長線上にお客さまがいるんだと思います。接客業ではありますが、割と一人好きな人は多いですよね」とワンオペ時代を振り返る藤生氏。当時から月商300〜320万円をコンスタントに積み上げていたが、そこから先の成長は、つねに霞んで見えていた。

「グラスが空になっているのは見えているのに、手が離せなくておかわりを聞きに行けない。遅い時間帯に『今から行っていいですか?』と電話が来ても、もう体力が残っていなくて断ってしまう。そういうことが重なっていました」

さらに、週の初めは週末に向けて無意識にブレーキを踏んでいた、と藤生氏は打ち明ける。どうしても手が回りきらないことが、ときには批判の対象にもなった。

「Googleマップの口コミで批判的なコメントが書かれることもありました。自覚がある内容もあり、それはショックですし反省もするのですが、こちらも悪気があるわけではありません。どうしても一人ではキャパシティーが足りないんですよ。ほかにも満席のため入店できなかっただけで誹謗中傷の書き込みをする人もいたりして……」

一人だけの孤独な厨房で晒される悪意に対し、心の支えとなったのは、家で待つ妻子や足繁く通う常連客の存在だった。そして、同業者からの声も大きかったと藤生氏は振り返る。

「同業者の皆さんは、同じ気持ちで働いている仲間だと思っています。その仲間たちに評価されたり、良い言葉をもらえたりすると、正直すごくうれしいです。結構、見栄っ張りな性格なのもあります(笑)」

最前線で全力を尽くすからこそ、心ない口コミが届いたときのダメージも大きかった。それでも同業者たちからの「gnudiはすごい」という声を糧に、藤生氏は一人で走り続けた。

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。