2017年注目のお酒「クラフトジン」。凄腕バーテンダーがみたその魅力とは?
『BAR Ben Fiddich』で扱うクラフトジン
2016年はクラフトビールなどのクラフト系の飲み物が注目を集めた。クラフトとは、「小さな醸造所で、職人が造ったもの」をさす。
クラフトビール以外にもクラフトコーヒー、クラフトワインなど、“クラフト”のつく商品が注目を集める傾向があり、飲食店の集客にも大きな影響を与える存在になっている。職人ならではの個性ある香りと味わい、普段とは違う特別感……。クラフトがトレンドになっているのは、一歩先を求める感性豊かな消費者が増えてきている所以なのかもしれない。
そして、今年飲食業界ではクラフトジンが流行ると予想されている。国産ものが非常に少ない蒸留酒「ジン」だが、昨年10月には、岡山県の老舗酒造「宮下酒造」が国内初の試みと言える樫樽貯蔵の『クラフトジン岡山』を販売開始。同月、日本初のクラフトジン蒸溜所「京都蒸溜所」が製造する『季の美 京都ドライジン(KI NO BI Kyoto Dry Gin)』が発売と国産のクラフトジンが次々と誕生した。
飲食店でもクラフトジンを扱う店舗が少しずつ増えてきているが、今回はそんな飲食店の中でもひと際クラフトジンへのこだわりを持つ、新宿『BAR Ben Fiddich(バー・ベンフィディック)』の鹿山博康さんにクラフトジンの魅力についてお話を伺った。まずはクラフトジンとはどんなお酒なのかを聞いてみた。
「ジンを作るには、原料用アルコールの種類は問いません。穀物由来のアルコール、またフルーツ由来のアルコールを用いたものもあります。そのアルコールに各種ボタニカル(植物)を浸漬し、蒸留して作る。どのボタニカルを使うかで味や香りに大きな差が出ます。もちろんジンなのでジュニパーベリー(ヒノキ科の常緑樹)が主体となりますが、そこにスパイス系のボタニカル、緑色系ハーブのボタニカル、そして柑橘ピールのボタニカルなどを配合することにより味に差をつけていくのです」
鹿山さんのブログによると、「欧米諸国では小規模生産のクラフトジンがタケノコのように誕生し、各々のアイデンティティのもと様々なジンが造られている。(中略)様々なボタニカルが主原料になる為、今までジンとしては使われていなかったボタニカルが使われることも」とのこと。

お話を伺った『BAR Ben Fiddich』の鹿山博康さん
クラフトジンにはその土地のアイデンティティが詰まっている
ちなみに鹿山さんは、クラフトジンの人気が高まりつつある理由をどのように考えているのだろう?
「昨今、クラフトジンがここまで広まったのは、考察するに、食の業界でもあるようにその地域のアイデンティティがクラフトジンを通して表現されるようになってきたことが挙げられると思います。大手の強いジンに対抗する為に、そのローカルでしか採れないボタニカルを用い独自性を出す。日本の地方でも道の駅などに行くとその地域性を“売り”にしているのを見かけますが、それと似ていますよね。また、ジンはウィスキーやブランデーと違い、作ってから何十年も樽に寝かせるようなプロジェクトではないので比較的安価に作れるんです」
安価に作れることも、クラフトジンが広まる要因になったと分析する鹿山さん。そんなクラフトジンの楽しさは、やはり「香り」だという。
「その多種多様なボタニカルの配合により、大きく香気成分が変わりますし、もちろん味わいも変化します。ジンの味わいや香りを通して、作られている土地のアイデンティティを楽しんでほしいですね」
実際に飲んでみた客の反応はどうだろう?
「お客様の反応は良いですよ! クラフトビールやワインの人気にはまだ劣りますが、クラフトジンの認知度が高まってきたこと、そしてお客様がボタニカルへ興味をお持ちであることを実感しています」
鹿山さんは海外へクラフトジンの材料を探しに出かけ、その土地の文化を学んだりと非常に意欲的。そんな鹿島さんならではのクラフトジンに対するこだわりとは何か。
「こだわりというよりはまだまだ知らないことがたくさんある。その知識研磨の為に材料を見に行きます。昨年はスコットランドの植生探訪、スイスの植生探訪をしました。土壌、高低差、色々な条件が重なり多様な植物が育っている。それを見るのが楽しいですね」
そして「その地域の植物の世界観が一つの瓶に詰まっているのがクラフトジンだ」と結ぶ。まだまだ開拓の余地のあるクラフトジン。今年、どんな盛り上がりをみせるのかこれからが楽しみである。

『BAR Ben Fiddich』
住所/新宿区西新宿 1-13-7 大和家ビル 9F
電話番号/03-6279-4223
営業時間/18:00~翌3:00
定休日/月曜
席数/カウンター7席、テーブル2席(4人がけ)
