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グーグル出身者が作る最先端カフェがすごい理由。ITの力で提案するコーヒーショップの未来

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独自開発した会員カードリーダー

ITを活用し「美味しいコーヒー」の再現性を高める

同店のユニークなところは、店舗のいたるところにITを活用しているところである。たとえば、Suicaにも使われている「RFID(非接触型チップ)」を使った会員カードや、カードリーダーも独自に開発。カードをかざすだけで会員情報を瞬時に読み取ることができる。

「会員情報をデータ化することで、どんな人に、どんな風味のコーヒーが好まれているのかという情報をストックできます。その傾向を分析すれば新商品の提案もしやすくなりますよね。将来的には多店舗展開して、会員はどこの店舗でも自由に行けるようにする予定です。会員の分母が大きくなれば、さらに効率よくデータの収集や分析、情報提供ができるのではないかと思っています」

レシピを保存するために用いている「acaia デジタルスケール」

コーヒーを淹れる際にもITを駆使しているという。たとえばコーヒーサーバーの下には「acaia デジタルスケール」を敷き、豆の種類や、お湯と粉の比率、コーヒーを抽出するまでにかかった時間を記録。アプリと連動し、レシピを細かく保存している。また出来上がったコーヒーは、アメリカのVST社が開発したコーヒー濃度測定器に滴下することで、酸味や苦み、濃さを数値化している。

「データを取った上で、実際に飲んで『思ったより苦かった』とか『もっと薄い方が美味しい』ということがあれば、バリスタがレシピを調整していきます。このレシピをチームで共有することで、おいしいコーヒーの再現性を高めているのです。沸騰させたお湯にスムーズに水を足すことで、最適な温度をキープするための特別な機械も導入しました」

アメリカのVST社が開発したコーヒー濃度測定器

スペシャリティコーヒーといえば、職人的な知識と経験が問われる世界というイメージがあるが、大塚さんはどうしてITを導入したのだろうか。

「すべての情報をデータにして分析し、結果を調整するというのは、IT業界では日常的に行われているパターンです。こういうテクノロジーをカフェに持ち込んだら面白いのではないかなと思いました。他の飲食店でも応用できるのではないでしょうか。たとえばお茶をいれるときに、茶葉を蒸らす時間や温度などをデータ化することもできますよね」

デジタルデバイスで美味しさを担保したコーヒーはもちろん、メッシュネットワークと呼ばれる高速Wi-fiが整備された店内は、 ITを活用する人にとっても魅力的だ。いわゆるノマドと呼ばれるフリーランサーや営業マンにとって、気兼ねなく作業できるスペースは貴重である。そういう人たちと相性が良いと思われるのが、同店の環境であり、「コーヒーの定額制サービス」だ。

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三原明日香

ライター: 三原明日香

編集プロダクションに勤務し、フリーライターとして10年以上活動。ふとしたことから労働基準法に興味を持ち、4年間社労士の勉強に打ち込む。2014年に試験に合格し、20年4月に開業社労士として独立した。下町の居酒屋で出されるモツ煮込みが好物。