ドトールが非正社員に退職金制度を導入。加熱する飲食業界の人材獲得競争

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飲食業界の人手不足は、少子化による生産年齢人口の減少で深刻化する一方だ。そんな中、大手飲食企業が今までにない雇用条件で人材確保に動いている。
『ペッパーランチ』や立ち食いステーキの『いきなり!ステーキ』を展開するペッパーフードサービスは、就業祝い金を20万円も支給するという。1~2万円の祝い金はよくあるが、20万円というのは破格だ。また、全国に焼鳥居酒屋を展開する鳥貴族は、飲食業界では珍しい退職金制度を導入するほか、住宅補助として、敷金・礼金ゼロで住める住居を用意。福利厚生の手厚さが際立っている。
退職金に関しては、ドトールコーヒーが非正規雇用者を対象に退職金制度を導入した。社会保険に加入し週30時間以上勤務する従業員が対象で、「資産形成」面でのサポートとなる。確定給付企業年金制度の利用で、同社が毎月100円の掛け金を負担し、従業員は月給の10%以内の金額を積み立てる仕組みだ。パート・アルバイトでも将来に向けた資産形成ができることが大きな魅力になる。
富士そばもパート・アルバイトに対して退職金と、さらに年2回のボーナスも支給している。有給休暇制度も設けているから、非正規雇用者に対してはかなり手厚い待遇だ。頑張り次第では社員への採用もあるという。経営方針である「従業員の生活が第一」を具現化していることで、SNSで「ホワイト企業」と話題になるほどだ。
また、長く働くためのサポートという点で、女性が活躍できる環境づくりに力を入れる企業もある。国内のみならず海外でも事業を展開するカスタマーズディライトがその一つ。無料の託児所を用意し、子育てと仕事の両立を応援している。夜の22時まで預けられるので、遅い時間の勤務も可能だ。出産後は、週休3日制で、残業なしというゆとりのある働き方もできるという、女性にとってうれしい制度が整っている。

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個人店が人手不足の解消にとるべき策は?
こうした待遇は大手企業だからこそできる策でもある。中小の飲食企業や個人店の場合は、魅力的な環境づくり、視点を変えた採用方法などで、求職者の心を掴み、また定着させることができるのではないだろうか。
例えば、働き方に柔軟性を持たせて、子育て中の主婦、副業の会社員、シニアなど、従来と異なるターゲットにアプローチしてみる。シニアは早朝の2~3時間、子育て主婦は昼間の3~4時間、副業の会社員は夜の2~3時間など、それぞれ短時間勤務であっても、うまくシフトをコントロールすれば、正社員の負担軽減が可能になる。
“残業なし”や“まかない有り”といった条件の提示も効果的だ。特に学生やフリーターは、まかないの有無がアルバイト選びのポイントの一つとなり、求人サイトでも「まかない」特集が組まれるほどだ。満足度アップにつながれば、紹介や口コミで応募者が増える可能性もある。
また、研修や資格取得補助などの制度は、スタッフの定着率向上のための一案。英国風パブ『HUB』を運営するハブでは、海外研修のほか「ハブ大学」という研修プログラムを行うなど人材育成に力を入れ、非常に高い定着率をキープしている。ここまで大規模でなくても、研修などの充実はモチベーションアップの一助となる。
業態や規模によって有効な策は異なるが、個人店を経営されている方は、働き方の見直しや待遇改善など出来ることから取り組んでみてはいかがだろう。
