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朝9時オープンの型破りなワインバー『ウルル』。きっかけは「好きな仕事を続けたい」という思い

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1階はカウンター6席のみ。その小ぢんまりとした雰囲気は人との距離を近づけ、初対面同士の客たちも自然と会話に華を咲かせていく

飲食業界を諦めないで済む「続けられるモデルケース」を目指す

さらに廣中さんにとって嬉しかったのは、家族と過ごす時間ができたこと。以前は深夜に帰宅すると家族は眠っていて、朝は廣中さんが起きることができずにまったく顔を合わさないまま数日が過ぎることも珍しくなかった。「でも、今のスタイルなら夜帰ったら眠っていない家族の顔を見ることができます(笑)。少し話す時間も取れる。小学校に通う6歳の子どもと同じ時間に起きて、一緒に朝食を食べることもできるんです。もちろん朝はバタバタするからゆっくりというワケにはいかないけれど、以前はそれもできなかった。家族と毎日会話する時間があるのはうれしいですね」と廣中さんの声が弾む。

昨今、飲食業界の人材不足が問題となっているが、じつは飲食業界で働きたいと思う人は少なくない。しかしそんな思いを妨げているものの一つが、夜遅くまでの営業だ。年を重ねるごとに体の無理はきかなくなるし、夜遅くまで働いていると家族とはすれ違いになりがちだ。さらに女性の場合、結婚や出産などを経て改めて飲食業界に戻りたいと思っても難しいものがある。
 
「日中の営業なら、そんな人たちが諦めることなく、もう一度戻ってくることができるんじゃないかなって思うんです。夜は夜でもちろんいいけれど、『ウルル』と同じサイクルで営業する店がもっと増えてほしいなと思います。そのモデルケースになれたらいいですね」。

「好きな仕事を続けたい」。その純粋な思いから誕生した新たな営業スタイル。スキルはあっても、夜の営業時間がネックとなり飲食業界を諦めていた人が、戻ってきて働き続けることができれば新たな人材確保につながっていく。既成概念に捉われない『ウルル』のスタイルは、これまで飲食業界が抱えていた課題の解決への糸口につながっている。

廣中祐二(ひろなか・ゆうじ)
1976年、広島県生まれ。調理師学校の授業をきっかけにワインにはまり、飲食店のほかワイナリーやワインショップに勤務。クラウドファンディングで賛同者を集め2016年6月にワインバー『Uluru』をオープン。自然派ワイン中心の品揃えと無農薬・有機栽培の食材を使った一癖あるアラカルト料理で人気を集めている。

世界中から観光客が訪れる平和記念公園から橋を1本渡ったすぐの場所にある。店内では訪日外国人の姿も珍しくない

『Uluru(ウルル)』
住所/広島県広島市中区堺町1-1-8
電話番号/082-233-0322
営業時間/9:00~20:00(土曜~22:00)、満月の夜のみ19:00~24:00
定休日/不定休
席数/14席

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戸田千文

ライター: 戸田千文

広島・東京を中心に活動するフリーランスの編集・ライター。これまでにグルメ冊子や観光ガイドブック、町おこし情報誌などの編集・執筆を担当。地方の魅力を首都圏に発信する仕事をするのが夢。おいしい地酒を求め、常にアンテナを張り巡らせ中。