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GACKTの「日本のランチは安過ぎる」発言に対する飲食店の声。「いい問題提起」「現実は甘くない」

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Photo by iStock.com/Sean_Kuma

ブラック企業認定は? 「労働時間は長い、給料も良くない…」

GACKTさんのもう一つの指摘、飲食店の多くが「価格の安さ」がブラック企業認定されやすい原因の一つという点はどうか。Bさんは「確かにそうかもしれません。労働時間は長いし、給料も良くない。しかし価格を上げてお客さんが減ったら、アルバイトはカットしなければなりません。自然と厳しい労働条件になってしまうのでしょう」という。

Aさんはもっと直接的で「日本人は働きすぎだと思います」と明言する。その理由も明快である。「コンビニや大手企業が相手というのもあります。そういう所は経営効率が違います。ウチの場合、中規模企業なみの効率で働いているから何とかなっていますが、普通の小規模店は14~15時間働いているのではないでしょうか。最低賃金さえ、もらっているかどうか。根深い問題です。ウチはブラックと言わないまでも、厳しい方かもしれません」。こうした問題について「短く働いて賃金が高い方がいいに決まっています。いつかは変わってくるとは思います」と変革の必要性を口にする。

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店舗によって微妙な温度差、一概に言えない問題の難しさ

最後にGACKTさんが言うように、安すぎるランチの価格を正常化することはできるのか、値上げに踏み切ることはできるのかを聞いてみた。Bさんは「650円でランチを出していたけど、50円のアップでも難しいでしょう。頭の数字が6から7に変わるのは大きいです。たとえばコーヒーをつけるなどすれば話は別ですが。料金を上げれば、お客さんは内容が良くなったと期待します。ただ上げるだけなら、お客さんは逃げると思います」と直ちに値上げすることはできないと言う。

Aさんの場合はBさんとは若干異なる考えをする。Aさんの店舗の場合、無農薬野菜使用など健康志向をうたっているだけに、顧客は目的を持って来ているという考えがある。「仮に50円、100円値上げするとしたら……どうでしょうかね。ウチの場合に限れば、あまり変わらないかもしれません。その意味では、料金設定を少し間違ったかなという思いはあります」と迷いが生じている様子である。

こうしたことは店舗のコンセプトや、周辺の地価、周囲の競合店、コンビニとの距離などによってそれぞれ事情が異なる。結果的にもう少し値上げをしても大丈夫な店もあれば、もうギリギリ、それ以上は上げられない店もあり、一概には言えないというのが正解だろう。それが飲食店によってGACKTさんの意見に対する思いに微妙な違いになって現れる。

Aさんは「GACKTさんは、いい問題提起をしてくれたと思います」と賛意を示す。一方Bさんは「私たちの立場を考えて、よくぞ言ってくれたという気持ちはあります」と言いながらも「ただ、現実は甘くありません」と付け加えることを忘れなかった。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/