GACKTの「日本のランチは安過ぎる」発言に対する飲食店の声。「いい問題提起」「現実は甘くない」
タレントのGACKTさんが自身のオフィシャルブログ内で、飲食店のランチの値段に関する見解を披露して話題を呼んでいる。問題となったのは10月23日公開の「菊花賞ってこんなに凄かったとは…」という記事の中での発言。日本のサービス業がほとんど上手くいっていないのは、海外に比べて価格設定が安すぎることが原因になっていると持論を展開。その例として飲食店を挙げ、ランチが800円から1000円程度であることに対して「正直おかしい」と語った。また飲食関連企業の多くがブラック企業認定されやすいのは、価格設定と人件費のバランスの悪さに根源的な問題があるのではないかと指摘している。GACKTさんのこうした発言をどう感じるか、実際の飲食店の現場の声を聞いてみた。
大手チェーン店との競合で上げるに上げられず
GACKTさんの発言に対してネットでは「確かに安過ぎるかもしれない」「庶民はランチに1000円以上出すのはつらい」「GACKTのような金持ちに言われても…」など、様々な意見が飛び交った。客側であっても「無理に安くして経営に歪みを生むよりは、従業員や店の存続のことを考えた方がいいのでは」と第三者的な立場から論じる人がいても不思議はない。
逆に食べる側にすれば安くて美味しければありがたく、トップ級のタレントに「ランチが安い」と言われても「あなたにとっては800円でも1200円でも大した差はないでしょうが、我々には大問題」と反発を感じる立場の人もあるだろう。
一方、飲食店サイドはどうか。都内で飲食店を経営、税抜きで900円台のランチを提供している40代の男性Aさんは「GACKTの言っていることは、正しいと思います」と同意する。「ウチのランチも安いです。ウチぐらいの素材を使ってこの金額は他で見たことがありません。当然、ランチだけではやっていけません。ウチの場合はテイクアウト、ケータリングもあるので、それでギリギリやっていけるぐらいです」と続けた。
Aさんの店では無農薬の野菜を使うなど素材にこだわりを持ちつつ、金額も極力抑えている。そのような価格設定をする理由を「飲食業界全体的な動きとして、自分のところだけ高くできません。こういう金額を設定しているのは、コンビニや大手企業が相手だからというのもあります。彼らは大企業で経営効率も良く、安くできますから」と苦しい事情を明かす。
埼玉県内で飲食店を経営、600円台でランチを提供する50代の女性Bさんは「店としては、安過ぎると言われて『はい、そうですか』と上げるわけにはいきません」と言う。その理由はAさんとほぼ同じである。「確かに高くすれば店は助かります。しかし、牛丼店、ほっともっとなどでは安くランチが食べられます。ファミレスも安いですよね。ドリンクバーもありますし。そういう状況を考えると価格は抑えざるを得ません」。
Aさん、Bさんの話に共通するのは、大手のチェーンレストランと同じ土俵で戦う苦しさである。大量仕入れで大量販売、スケールメリットを利用して価格を抑え、ドリンクバーなど多彩なサービスをするレストランとまともに戦っていくにはギリギリまで経費を節減して価格で勝負するか、大手にはない独自性を出すかなどの選択を迫られる。仮に近所に大手のレストランがなくても一定の価格帯を超えれば、コンビニなどに客が流れることも考えられる。そうした苦しい状況の中、店が生き残っていくためのギリギリの料金設定をせざるを得ないというのである。
一つの考え方として、ランチはディナーのための呼び水と割り切って、赤字が出なければいいというやり方もある。しかしBさんは「ランチは難しいです。短時間の勝負ですし。そのためディナーのためのランチという戦略はあると思います。とにかく店に来てもらうようにする、習慣づけるという考え方ですね。ただ、簡単ではありません。昼と夜は客層が違います。両方来てくれるかと言うと、なかなか難しいものがあります」と懐疑的である。