エリック・カイザー氏と木村周一郎氏の対談レポート。伝統的なパン作りが世界の新たなトレンドに

木村周一郎氏とエリック・カイザー氏。(C)Yukihiro Watanabe
フランスのみならず日本やアジア、アメリカへ次々と店舗を拡大している、世界的なパン職人・エリック・カイザー氏が先ごろ来日。日本で『メゾンカイザー』としてパートナーを組む、ブーランジェリーエリックカイザージャポンの木村周一郎氏とともに対談を実施した。伝統的なアルチザン(職人)の製法による本物のパン作りにこだわることで、世界のパン文化に新たなトレンドをもたらしてきた二人の話を今回はご紹介する。
国によって違うパンの市場。アメリカは大量生産、日本は菓子パン
パリをはじめフランスの街角では昔ながらのパン屋があり、焼き立てのバゲットを手に歩く人をよく見かける。フランスでは、厳格な職人保護政策のもと、「ブーランジェリー(パン屋)」と看板を出すには、パン生地を手作りするなど厳しく定められた基準をクリアしなければならないという。最近は竹炭やスパイス入りといった変わり種のパンも流行っているが、フランスの『エリックカイザー』で売られているのは、バゲットなど伝統的なパンが7割。バゲットを主食とする食文化が根づいている。
アメリカでは、ドーナツやベーグルを売る店を見かけることはあっても、パン屋を見かけることは少ない。例えば食パンを買うにも、消費者の多くは大量に作られた袋入りのものをスーパーで購入する。その理由としては、人口の増加や戦争を背景に大量生産のためのイーストが開発され、砂糖や油脂を添加して腹を満たすパンが普及したことが挙げられる。
日本のパンは、明治時代に「木村屋のあんぱん」で広まったように、「パン=菓子パン」として発展してきた。米を主食とするアジアの国々も同じ傾向がある。

「本物のパン作り」のこだわりを熱く語るエリック・カイザー氏。(C)Yukihiro Watanabe
カイザー氏と木村氏の挑戦
カイザー氏と木村氏は、伝統的な製法による本物のパンでこれらのマーケットに新風を吹き込んできた。
近年のアメリカでは、食の安全や品質への関心が高まり、ナチュラルな素材を使った手作りのパンに付加価値が認められ、『エリックカイザー』もNY・マンハッタンなどで徐々に店舗を増やしている。また日本では、『メゾンカイザー』の国内初出店から18年目の現在、世界レベルの日本人パン職人が約50人も育った。『エリックカイザー』が米国やアジアに進出する際、現地の指導者として日本人のパン職人を派遣することもあるという。
