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約5割の飲食店が「海外出店」に前向き、希望エリア1位は「シンガポール」。最大の難関は「人材」か

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Photo by iStock.com/yourbordo

先日、海外にある日本食レストランが2年前に比べて3割ほど増加したと農林水産省が発表した。特にアジア、中東、中南米ではその伸び率は5~6割という。日本食ブームが世界的に広がっているのを改めて実感できる結果だ。まさに海外出店の追い風が吹いているが、実際のところどれほどの飲食店が具体的に検討しているのだろうか。そこで今回は飲食店の海外出店の検討状況について調査した。

■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:154名
調査期間: 2017年11月6日~2017年11月9日
調査方法:インターネット調査
アンケート結果はこちら

■回答者について
本調査に協力いただいた回答者のうち61.7%が1店舗のみを運営しております。また、回答者のうち東京にある飲食店の割合は62.3%(首都圏の飲食店の割合は75.9%)となっており、こうした背景が結果に影響していると推測されます。

5割近くの飲食店が海外出店に前向き。希望エリア1位はシンガポール

まず海外出店の検討状況について聞いたところ、「具体的に出店を検討している(6.5%)」「チャンスがあれば出店を検討したい(42.9%)」「出店は考えていない(50.6%)」という結果になった。

また「具体的に出店を検討している」「チャンスがあれば出店を検討したい」と答えた回答者の営業業態を訪ねると、「居酒屋・ダイニングバー(32名)」ほか、「和食(13名)」「ラーメン(12名)」と続いた。やはり、外国人に人気がある日本ならではの食文化をもって海外で勝負をしたいと考える人が多いからだろう。

5割近くの飲食店が海外出店に前向きという結果に

次に、「具体的に出店を検討している」または「チャンスがあれば出店を検討したい」を選択した回答者に対し、出店を検討している地域を聞いたところ(複数回答可)、最も回答数が多かったのは「シンガポール(29名)」。このほか「タイ(21名)」「ハワイ(21名)」「ヨーロッパ(20名)」「台湾(19名)」「ベトナム(16名)」「中国(15名)」「香港(11名)」「マレーシア(9名)」「インドネシア(8名)」「北米(8名)」「カンボジア(8名)」「フィリピン(7名)」「韓国(5名)」「ミャンマー(3名)」と続いた。

シンガポールでの出店を検討している人が最も多かった

さらにその地域で出店を検討している理由を自由記述式で聞いたところ、以下のような回答が得られた。

■出店希望地域:シンガポール
「経済状況が良く、テロや紛争による地政学的リスクが低いから」(東京都/鉄板焼き・お好み焼き)

■出店希望地域:シンガポール、ハワイ
「両国とも海外では比較的治安が良いイメージがあります。シンガポールは富裕層が多いイメージで、単価が多少高額になっても問題なさそう。ハワイについては、北米系の複数のお客様から好評をいただいた商品があるため。その商品を中心にするならまずアメリカからが望ましいが、マネジメントなどを考慮すると北米は困難。そこで距離的に近いハワイからと考えています。日系人が多く、日本語がある程度通用することも重要なポイントです」(東京都/和食)

■出店希望地域:シンガポール、タイ
「シンガポールは、欧米人が観光に訪れることも多く食のリテラシーが高いから。タイは、人件費が安いため。また日本人をリスペクトしていること、外食のほか総菜などをテークアウトして楽しむ人が圧倒的に多いことから選びました」(東京都/フランス料理)

Photo by iStock.com/Shaiith

■出店希望地域:タイ、ベトナム
「特にベトナムは全人口の平均年齢が30代なので戦後の日本のように活気があります。同時にこれから物の提供が重要になり、国民の所得が上がることが予想されるため、早めに根を下ろしたい考えです」(大阪府/ラーメン)

■出店希望地域:ベトナム
「経済成長が期待できる人口ボーナス期を迎えている所であり、かつフランス領であったのでフランス料理や菓子の文化があるためです」(神奈川県/フランス料理)

土地勘も薄い海外で出店となると、やはり治安面を考慮する人が多くいた。また今後、経済成長が見込めるエリアを選択するケースも多く見られた。アンケートで人気のシンガポールは、観光産業が盛んで、治安・経済ともに安定した国。日本人はもちろん欧州やアジア各国からの観光客が多く訪れることに加え、多民族国家でさまざまな文化が融合している。このことから、日本からの出店も抵抗なく迎えてくれる空気があるのもポイントとなっているようだ。

最も強く認識されている課題は「現地でのスタッフ雇用、教育」

海外出店を考えた時に大きな課題となりそうなものを聞いたところ(3つまで回答可)、最も回答数が多かったのは「現地でのスタッフ雇用、教育(105名)」、次いで「マネジメントできる人材の不足(82名)」、「現地の取引業者探し(78名)」が続き、人材周りの課題に対する懸念の大きさが浮き彫りとなった。

異国での現地採用や取引先探しは、それだけでも不安が大きいもの。さらに雇用後の教育となると、言語や文化の違いを懸念する人が多いのは仕方がないことだろう。上記のほかにも、「会社設立・登記」が課題と感じる人も48名いた。出店ルールが国により異なり、日本人がオーナーとなりいきなり商売を始めるのはなかなか難しい。そのため現地のビジネスパートナーとともに事業をスタートすることが多いが、その情報の少なさをネックに考えている人も多いようだ。

やはりスタッフの雇用・採用に不安を感じている人が多い

最後に、海外進出について自由回答で意見を聞いてみた。

「言葉の問題以上に、現地の文化や風習、宗教などの考慮が最も重要かつ困難な問題であると考えています」(東京都/和食)

「日本が誇る味・接客をそのまま海外でも発揮するために、調理人とホールマネージメントができる従業員を探すのが難しいと感じます。経営側が日本にあると、海外支店の管理をするのが大変難しく、現地で動ける信頼できる人を見つけないと出店してもすぐに閉店へ追い込まれそう」(東京都/寿司)

やはり現地の習慣の違いを心配する声が目立つ。そのため、「海外との橋渡しのサービスをしてくれるような組織があればニーズがあるのでは」(東京都/カフェ)というように、海外出店のサポートをしてくれるサービスを望む声も複数あった。

また「日本の飲食店が海外へ進出することは、日本の食文化や高い調理技術、生真面目で丁寧な仕事、気遣い、もてなしの精神など、海外の方にとって大きな付加価値となる要素が多いだろうと感じています。良い飲食店の海外進出は我が国への興味や理解を深めてもらうこととなり、結果、経済発展にも繋がる有意義なことだと思います」(埼玉県/ラーメン)という声も。

日本食への関心が世界中で高まるなか、海外出店は大きなチャンスでもある。今すぐというのは難しい人も、将来を見据えて早めにリサーチを始めてみてはいかがだろう。

「飲食店リサーチ」について
飲食店リサーチ」では、飲食店を経営する皆さまに、店舗運営に関する様々なアンケートを行っています。 アンケート結果は、飲食店の皆さまに店舗経営のヒントとして活用していただけるよう、レポート記事として公開されたり、 皆さまが利用する業務用商品やサービスなどの開発に役立つデータとなります。

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戸田千文

ライター: 戸田千文

広島・東京を中心に活動するフリーランスの編集・ライター。これまでにグルメ冊子や観光ガイドブック、町おこし情報誌などの編集・執筆を担当。地方の魅力を首都圏に発信する仕事をするのが夢。おいしい地酒を求め、常にアンテナを張り巡らせ中。