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『串カツ田中』全面禁煙化で客層に変化。「家族連れ」ターゲットに進化する居酒屋業界

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Photo by iStock.com/Max_Xie

東京五輪の年(2020年)の4月1日から都内で従業員を雇う飲食店では原則、タバコは吸えなくなる。受動喫煙防止条例が成立し全面施行まで残り2年を切っており、その対策に頭を抱えている店舗も少なくないはず。全国レベルでも改正健康増進法が7月18日に成立、一定規模の飲食店は原則禁煙となる(客席面積100平方メートル以下は喫煙可)。

居酒屋は昔から「酒とタバコ」はワンセットでとらえられており、スモーカーの足は遠のくかもしれない。しかし嘆いてばかりでも状況は変わらない。そうなったらそれを逆に利用して客を呼べばいい。禁煙・嫌煙の時代に飲み込まれた居酒屋の逆転の発想の戦いはもう始まっている。

『串カツ田中』90%以上の店舗で全面禁煙、客層に現れた変化

串カツ田中ホールディングスは、2018年6月1日から国内195店舗のうち92.3%にあたる180店舗を全席禁煙とした。受動喫煙防止条例案が成立したのは6月27日、それに先んじての動きと言える。この点について同社は7月20日、決算説明資料でその影響を明らかにした。

ほぼ全面禁煙とした2018年6月は売上減を記録。既存店の売上高は前年同期比97.1%、客単価は95.0%と減少した。単純に考えて3%近い売上高の減少は深刻である。しかし数字を見ていくと、そこに新たな動きが感じられる。

売上高が下がった一方、客数は前年同期比102.2%とアップ。客層の変化は家族連れがプラス6%と高成長を遂げて、会社員・男性グループのマイナス6%をスッポリと補っている。それ以外で目立つのは女性やカップルがプラス1%で全体を押し上げる結果となっている。大雑把なイメージではあるが、喫煙者が多いと思われるグループ(会社員・男性グループ)が減った代わりに、非喫煙者と思われる層(家族や女性)が増えたという構図が見えてくる。

このことは別のデータからも推測できて、同社発表資料では19時と23時の時間帯売上が20時と22時台に分散され、ピーク時間が早まり、早い時間帯の売上高が増加する一方で、深夜帯のそれは減少。まさに家族連れが増えた影響を思わせるものとなった。

Photo by iStock.com/Sarasa Suzuki

場当たり的ではない全面禁煙、客層を意識した経営方針

『串カツ田中』のこうした戦略は、禁煙条例の成立がどうこうという場当たり的なものではないだろう。決算説明資料では「既存店の収益維持・向上」を目指す中で「客層別利用シーンの拡大」として、家族連れを明確にターゲットに据えている。それ以外には「学生」「外国人」そして「会社員」と合計4種類を規定。従来の居酒屋から脱却し、客層を広範囲に広げることを意識していることが読み取れる。そのような大きな流れの中の全面禁煙化ととらえるべきで、東京都条例の成立は、たまたま時期が一致しただけと考えた方がいいのかもしれない。

家族連れが増えればソフトドリンクの注文が多くなり、お通しがつかない分、客単価は下がる。その分を客数アップでどこまでカバーしていけるかが、今後の『串カツ田中』の勝負所であろう。2017年に55億2,900万円の売上高だった同社は、2018年は75億円を見込んでいる(決算説明資料より)。

Photo by iStock.com/Rawpixel

2013年に予言されていた「いざか族」。団塊Jr.世代の動きに注目

居酒屋の一般化は今に始まったことではない。2013年12月、株式会社リクルートホールディングスは「2014年トレンド予測」の中で、飲食業界におけるキーワードとして「いざか族」をピックアップした。これには「メニューや設備が進化した居酒屋に『家族の団らん』を求める団塊Jr.世代」という説明が加えられた。団塊Jr.世代(最多は1973年生まれ)は居酒屋の売上ピークの1992年前後に成人し、居酒屋チェーン黄金期を知る世代であり、その居酒屋慣れした世代が子育ての時期を迎えて、居酒屋に家族とともに戻ってきたというのである。

残念ながら「いざか族」は流行語とまではならなかったものの、そのトレンドは徐々に社会に浸透しているように見える。実際、居酒屋は徐々にその姿を変えている。「2014年トレンド予測」では、居酒屋の変化・進化を以下のように分析していた。

2003年 健康増進法施行・・・分煙の開始
2008年 リーマンショック・・・業態の多様化
2009年 女子会ブーム・・・ソフトドリンク、デザートメニューの充実
2010年 ママ会ブーム・・・子連れの母親をターゲット
2013年 いざか族の登場・・・家族連れ向け打ち手が続々

リクルートホールディングスの独自調査によると、2013年に子連れの外食で居酒屋を利用するとした人は15.6%。これは5年前のデータであるが、子連れ、特に赤ちゃんがいる家族が居酒屋に行く場合、分煙とはいえ喫煙が認められる店から足が遠のくのは当然。『串カツ田中』のように全面禁煙が打ち出されたら、一気にその垣根が下がることは予想がつく。

“赤ちょうちん”にママと子供の時代

2018年の今、大手グルメサイトで「居酒屋×子連れ・赤ちゃんOK」で検索すると全国で3万2191件がヒットするに至っている。こうしてみると、改正健康増進法、受動喫煙防止条例は先進的な取り組みというよりも、現状を追認する性質が強かったと言えるのかもしれない。かつてはサラリーマンの憩いの場、大人の社交場だった「赤ちょうちん」も時代とともに変わっていく。

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松田 隆

About 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ジャーナリスト松田隆 公式サイト:http://t-matsuda14.com/